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12月が終わり、1月に入って私は帰省したり、作家の仕事をこなしたりしていろんなことを忘れていた。


自分の奇形種のことさえ。

いや、それは嘘だ、いつも心の片隅にあったけれども無理矢理押しやることにしていた。


生理も順調に来たし、ピルを辞めてはいたがもうとても「軽く」なっており、ピルを必要としていた頃の生理とは違っていた。

同居人とも元々あまりしてなかったセックスしなくなっていたけれど、彼は元々セックスが好きなわけでなく、むしろ射精障害を持っていたのでオナニーさえほとんどしないということだった。付き合いたてからそういえばこの人「中出し」したことなかったな、と思っていた。

ピルを飲んでいることは伝えてあったので不思議ではあったし、私は気持ちよかったのでそれで良いが、彼は射精しないので最初は私のなかが気持ちよくないのかと不安になっていたものだが、そういうことだったのか。


彼は一度の女の膣で射精したことがないと言っていた。



孕まない女と、射精できない男。


すばらしいパートナーではないか。


ピルの服用もやめてよかった。



私たちは言葉でなく毎日寝る前に抱っこしてキスしていた。

それだけで好きという言葉より何倍も満たされた。




2月に入って、10日ほど過ぎただろうか

私は起きてすぐ下腹部の痛みを感じ、生理にはまだ早いのになあ、とカレンダーを見た。

確かに今日は2月11日。

生理の予定日は18日。


ふっと嫌な予感がよぎった。


奇形種のことだ


体の中で奇形種が痛みを誘発している!?

慌てたが、私はとある思いつきをした


(そうだ、奇形種ごと子宮を取ってしまおう)

最高の思いつきだと思った。手術は20万程度かかるが、母親に「子宮に病気があって取らなきゃいけなくなった、といえば出してくれるだろうし、入院も数日ですみ、生理はなくなり、何より孕むことはなくなる。セックスに全く支障は出ないらしい。

貯金も300万はある。


思いつきがすばらしすぎたのでFacebookに書き込みした後

私は一応必要になる時が来ると思って取っておいたCTスキャンの結果を一応確認してみることにした。


ものを書いている側として、「嘘」のないように漢字の間違えでさえないようにいちいち確認するのは私の癖であった


そして私が一番感ちがいしていたことに気付いた。


「右卵巣成熟性奇形種」


奇形種が出来ていたのは子宮ではなかった。

卵巣であった。


こんな間違いをおかすほど私はおかしくなっていてしまったのだった。

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