春日傘[はるひがさ:晩春]
魔がさしたような寂しさだった。柄にもなく外をうろつこうとしてしまうくらいには。
飾り気ゼロ、セキュリティは人並み程度の
開放的な風景にもかかわらずさっそく後悔しているのは、あまりに露骨な春日傘の群れを見たから。
きらびやかに飾り立てたパラソルたちが、目的もなさそうに、あてどなく人待ちするようにふらふらと動きまわっている。
夏が来ればそれぞれ地下に
だからこそのそっけないパラソルなのではあるけれど、今日は若干分が悪いというか、こっぱずかしいような気分だった。場違いなのだ。
こんなことならブックストアでも見ているんだった。ひと夏以上の量は確保してあるが、本を吟味するのはいつだって幸福な作業だ。唇を噛んで回れ右をする。慣れないことはするものじゃない。
と、そのとき私に声をかける者が現れた。ごくふつうの挨拶、そして軽い世間話。なんてことだ、私も春日傘の同類だと思われていたというのか。しかもこんな、素っ裸も同然のパラソルで。からかわれてなるものかと身構える。
けれど相手の声はどこか間が抜けていて、それでいて落ち着いた感じもあり、よくよく観察してみれば装飾だってなんとなく変だ。数式と図形が所狭しと書いてある。
きっとこの人はそれが美しいと信じているのだ。
うっかり笑いがもれる。相手がどうこうではない。ちょっと話してみたいかも、と考えはじめてしまっている私が、あんまり
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