第4話

 翌日、俺はスカートを履いた上、黒髪ロングのウィッグを被って登校した。今は朝のホームルームが始まる前の時間だが、教室全体が俺を見てこの美少女は誰だだの何だのとざわめいている。


 昨年からスラックスとスカートで好きな方を選択できるようになったらしかったので、一応念のためにスカートも買っておいた。だが履くことになる日が来るなんて思わなかった。いや別に履く必要はないんだけど、これくらいインパクトが無いと話題にはならないと思ったので履くことにした。ウィッグも一応ついでに買っておいていたのだがまさか使う日が来るとは思わなかった。軽くメイクもしてみたので見た目は完全に女子になっている、と信じたい。


「あの、君は……?」


 ホームルームが始まった直後、若い女性の担任が俺を指差し尋ねてきた。


「私ですか?」

「うん。ここは玉田くんの席なんだけど……」


 どうやら気づいていないみたいだった。声質は変えていないのに気づかれないとは。意外と女の子になってるみたいだ。それとも声を覚えられていないのか。だとしたら悲しい。もう10月で半年ぐらいの付き合いなのに。また泣くぞ。


 ともかくまだ気づかれてないならちょっと遊んでみるか。より一層インパクトも出るだろうし。


「私はあなたよ」


 俺は長くなっている髪をファサっとしながら言った。一回やってみたかったんだよねこれ。


「違うでしょ。誰なの?」

「違わないわ。私はあなたで、あなたは私なのよ。目を逸らさないで」

「どういう事!?」

「あなた自身の双眸で真実を確かめる事ね」


 俺は担任にそう告げスクールバッグを手に取ると、誰なんだこのクールビューティーはだのミステリアスガールだのとざわめきが止まらない教室から迷いなき足取りで出ていった。女装してきたのはいいがさっきから脚がスースーして落ち着かないし、このままバレないままなら俺が行方不明扱いされかねない。トイレでスラックスに着替えるとしよう。でもこの格好だとどっちに行けばいいんだ? 女子の格好だから男子トイレにいくのはなんかマズい気がする。一応言うが決して女子トイレに入る口実を作ろうとしている訳ではない。


 数分迷った末、結局男子トイレで女から男に戻った。あと俺は遅刻とみなされた。


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