またまたまた仲間がふえたよ
つまり、ジールとエイレが冷え切った俺の身体を交互に暖めてくれたってわけか。
ジールさんだけじゃ逆に危険ですしね。ってエイレは言ってくれてるけど、男に暖められても……その。
「大丈夫ですって、僕は下着姿じゃ暖めてませんから」
いやそーゆー問題じゃなくて……っいたたたた、安心したらまた傷が痛み始めた。
「マティエさんから話を聞きました、未だにケガが治らないとかって」
そう言って、エイレは持ってきたランプに火を点けてくれた。
そうだな、こいつにはまだ説明してなかったんだっけ。
「でも、なんで僕らの前からいなくなったんですか? 仲間のみなさんすごい心配してたんですから! まともに歩くことすらできないって聞いて、ひょっとしたら…」
また、あいつの目からぼろぼろと涙が。
「命を絶つ気なんじゃないかって……!」
ぎくっと俺の胸にまた違う痛みが走った。そうだとも、こいつの言うとおりかも知れねえ。
まともに動くことすらできない、みんなの厄介になる前に、俺は自ら……
「残された人はどうするんですか! 子供さんだってそうだし、今いる方々、それに故郷に残した人たちも。みんな……それに僕だって」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔が、俺の胸に飛び込んだ。
「ラッシュさんが大好きなんですから……!」
なんなんだこいつ、まだこの前会ったっきり、一日にも満たない付き合いだってのに、それほどまでに惹かれただのなんだのって。
でも、ジールだってそう。みんな本気なんだ。
「一人で悩まないでください、抱え込まないでください! 絶対に、絶対に僕たちがラッシュさんの身体を治す方法を見つけますから、だからもう消えたりしないでください……!」
鼻声で俺は、すまねえとしか返すことができなかった。
悪かった、こんなこと生まれて初めてだったから、俺も頭の中がわやくちゃになって、衝動的に逃げ出しちまって……
小さく震えるエイレの肩をぽんぽんと叩き、俺はあいつが泣き止むのを待ってようと……したんだが。
「あや〜、ラッヒュ目が覚めたんにゃ〜」
ジールがようやく目を覚ましてくれたんだが、なんか様子が変だし。
このふやけた口調、それに……うん、息がすっげえ酒臭い感じする。
俺はケガの影響でほとんど鼻が利かなくなってるんだけど、それでもなんとなく、それにヤバいくらい濃度の高い酒の息がジールから漂ってくる。ヘタしたら俺もこいつの吐息で酔ってしまうくらいな。
「な、なんでそんな酔ってるんだジール?」
「あのれー、雪の中でソーナンしちゃった時はお酒飲むと身体があったかくなるんらよー。ラッヒュもエイにゃもいっしょに飲もー」
と言って、ジールは背中から古びた酒瓶を取り出して俺に勧めた。
「どっから持ってきたんだ?」
「えっとねー、エッジャールの荷物から拝借したんにゃー」
オイこらまて、それって泥棒じゃねーか、しかもエッザールの持ってる酒って確か、火を吹けるくらい純度が高いんじゃなかったか!?
「えっと……お仲間のシャウズの方ですよね、エッザールさんって」
そして説明役はエイレにバトンタッチされた。
「ラッシュさんを探そうと外に出たら、突然倒れてしまいまして……聞いた話によると、シャウズ族は極度な寒さに弱いらしくって、その時は生命活動を停止に近い状態にして気温が上がるのをひたすら待つそうなんです。でもってジールさんはなぜかお酒だけ持って行ってしまって……。なんでもマティエさんからその酒は絶品だと聞かされたそうで、ずっと狙っていたらしいんです」
すまん、お前の言ってることが全く理解不能なんだが。
「まあ、とりあえずランプだけじゃ全然どうにもならないので、これ飲んで身体の中から暖まりましょう」
ちょっと待て、お前もこのヤバい酒飲むのか?
「あまり飲めないですけど、今はどうこう言ってられません!」
俺は飲まねえからな。絶対吐くし。
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