ナウヴェルの使命
みんな各々の場所へと戻り、食堂には俺とナウヴェルの二人だけになった。
そして明日はトガリの大臣就任式だとか本人が言ってた。
仕事早く行きたいってのにいちいち式なんかするかね? お偉がたどものこういうところが好きになれないんだよな……クソな儀礼を最優先するバカ連中としか思えねえ。
でもって、ナウヴェルはこれまでの経緯を俺に話してくれたんだ。
ワグネルとの継承者争いに負けて、自分は傭兵の道を選んだことを……な。
「ンで、爺さんはどーすんだこれから?」
「もちろん、お前たちの仕事に同行させてもらうさ」
そういやそうか、俺の鎧となるって話してたもんな。
あと、もう一つ目的が増えたんだ。それは……
「ワグネルがどこにいるか、奴に会いたいのだ」
まあ、言わなくてもわかるよな。俺の造ってもらった大斧だが、あれはラウリスタとしての魂が込められていないとのことだ。
あいつ……いわゆる、ラウリスタの鍛えし武器というのは、そんじょそこらの名剣とは全然違う。
それは、使い手の意思すらも斬れ味に変わる……という。
なんかよくわからないけど、使い手が斬れると念ずれば斬れるし、斬りたくないと思えば斬れないんだそうだ。
俺の斧はそれができない。って爺さんは断言した。
「何でもかんでもぶった斬るしか思っちゃいないお前には考えても無駄なことだ」
あーそーかい。だったらこの斧まだしばらく使わせてもらうさ。たとえ心のこもってない武器だと言われてもな。
で、本家を見つけていったいどーすんだ爺さん?
「うむ。まずはあいつに真意を聞きたい。何故このようなゴミを売りつけるまでに落ちぶれたのか……名声を求めるがあまりカネに目が眩んだのか? それとも……」
「誰かに弱み握られて、武器の粗製濫造しているかも知れないしな」
そういうことだ。と爺さんは苦笑いした。
じゃあ、あちらさんが鍛冶屋の精神に反したことしてたらどうすんだって聞いたら、
「私が、ラウリスタを継ぐ」って、サラッとすげえコト言いやがった。
「正直なところ、同胞は全て死に絶えて、もう私だけしかいないと思っていた。どちらかといえばうれしいことだらけさ。それに……」
爺さんは立ち上がり、大きく背伸びをした。
やべえな、もうちょっとで角が天井を突き破りそうだ。
「ラッシュ、お前には大きな借りもある……マルデで死んだと思っていたこの私の魂を、ディナレと共に繋いでくれた恩義がな」
「よせやい、俺のした事じゃねえし」
「ラウリスタになるか、この私になるかは全く分からぬが……お前のためならば、この命を槌と火に換えても、最高の武器を創り上げてみせるぞ」
ありがとな、爺さん。
けど俺はあんたが生きているだけで心強いんだ。
決して……命を投げ出すマネだけはしないでもらいたい。それだけさ。
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