第18話:闘いの約束。

「私の父親がね七草さんにオファーしたのよ」



「オファーってコーチとかそういう?」



てことは澪音さんのお家もそういう家柄なのか?



「そう、それで一週間、あの人の出す訓練や課題をこなして見込みがあるならってことで、少しの間色々教えてもらったのよ」



「そうだったんだ、それで逃げたって?」



そこからどう澪音さんから逃げたってことになるんだろう。




「一週間、結構ハードだったけど、私はついていったし、その間の七草さんも、結構褒めてくれたりしたのよ、でも最終日、今日以降はもうお前の事は見ないっていわれたわ」



違う、師匠が褒めるわけない、あのひとは技の確認以外では決して褒めない、トレーニングとなったら人の皮を被ったただの鬼だ。




「あのさ、ハードってどのくらい?」



「えっと、そうね」



なるほど、なら合点がいく。




「澪音さん、申し訳ないけどそれは師匠の特訓じゃない、師匠はそんな甘くないよ」



「は?」



ってなるよね普通。




「僕は5歳から師匠といる、澪音さんは二年生だから丁度一年違いで師匠と出会ったんじゃないかな?」



「そうね、私も5歳の頃だから、ってそれがあの人の特訓じゃないのと何が関係あるのよ」




多分、師匠は澪音さんのお父さんに言われて仕方なくって感じでしたんだ....



「今教えてもらった内容のトレーニング、僕は師匠とこれまでいてしたことがないよ」



「そりゃあそうでしょ、貴方無能力者だもの」



違う、そうじゃない。




「僕が言いたいのは、僕は師匠と出会ってから澪音さんが受けたような、甘いトレーニングは受けたことがないって事だよ」



「嘘つくのも大概にしなさいよ?」



ここで本当のことを伝えてあげなきゃ、きっといつまでも師匠への確執が残ってしまう。




「師匠は僕のことを子供同然、と言った、澪音さんは言われたことあるの?」



「ない、けど....」



心を鬼にして言わなきゃ。




「確かに師匠は強いし綺麗だし、憧れたり好意を抱いたりするかもしれない、けどそれがもし一方的な物だとしたら、師匠はどう思うかな?」



「でも....私はあの人を....」



気持ちは凄いわかる、けど、君はここを乗り越えないと今のままなんだ




「それに、師匠、って形じゃなくても関わり合いになれる方法は幾らでもあるよ」



「グスッ...グスッ....」



ずっと憧れてた人なのに、自分の気持ちだけって分かったら涙も出るよね....




「ありがと、言ってくれて」



「え?ありがと?」



悲しいんじゃないのか?




「辛いけど、そういう事ならって思えるわ、ずっと心の中にできたトゲだったから」



「そ、そっか....」



確かに、その方が良いのか?




「私は貴方を対抗戦で倒して、あの人に私の強さを認めさせる、そして私の師匠になってもらうことにするわ!!!」



「え?!」



そうなるんだ....



「とりあえず元気になったなら、よかった...けど、僕も負けるつもりはない、それに師匠に一度でも技を教わった事があるなら尚更ね」



「負けるわけないでしょ、私が」



この勝負、負けたら僕だけじゃなく、師匠の顔に泥を塗ることになってしまう、前の弟子の方が優秀だったと。




「澪音さんがどんな異能を使って、どんな戦い方をしようと、僕と師匠が編み出した最強の無能には敵わない、それだけは言っておくよ」



「言うじゃない、流石絢辻を倒した男ね」




僕自身も、姉弟子なら絶対に負けられない。




「それじゃ、僕はもういくよ」



「次会う時は対抗戦ね、楽しみだわ?」



僕は彼女に勝って、更に黒城学園が優勝する、そう決めたんだ。




「おいつかさ、お前なにやってた」



「ちょ、ちょっと忘れ物を....」



長話しすぎて遅くなってしまった....




「お前、澪音に話したな?」



バレてますよね。




「はい」



「澪音は何て言ってた?」




あれ?意外と怒ってない?




「負けないって言われました」




「はっはっは、あの子娘気持ちは強くなったみたいじゃないか、んじゃ早く帰るぞ」




師匠、嬉しそうだ、弟子同士が戦おうとしてるからなのか?




「はいっ!」

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