第10話:影と影。

「し、師匠!我妻さんの異能について本当に何も知らないんですか?!」



「知らないっ、自分で考えろ」



どうしよう....師匠の機嫌を損ねたまま選抜戦2日目を迎えてしまった...夜咲さんに聞くって手もあったけど、それは流石にずるいかと思ったし。



「ほら、次からお前のブロックだぞ〜」



「師匠!どうするんですか!このまま我妻さんと当たったら!可愛い弟子が困ってます!」



僕の悪い予感は今のところ的中率100%なのにこれじゃ....



「可愛い弟子はあんな女とちちくりあったりしません〜!べー!だっ!バカ弟子!!」



「師匠〜!お願いしますよぉ」



とりあえず初戦はないだろうから、僕の試合が始まるまでになんとか師匠の機嫌をどうにかしないと...




「さぁー!選抜戦第2日目!Cブロックの試合に移りたいと思います!対戦カードは〜...?」



どうしたら機嫌直してくれるんだ?んーっと、今日もお綺麗ですね?!とか?いや師匠がこんな単純な言葉で....




「初戦は我妻選手と早乙女選手だ〜!注目の無能力者と我妻家時期当主の注目の一戦です!」



へ?



「つかさー?頑張れ?」



「師匠!どうするんですか!本当に初戦になっちゃいましたよ?!」



もう、覚悟を決めるしか....



「し、師匠!今日もお綺麗です!!」



「・・・・」



急に師匠の声が小さくなった?




「師匠、なんですか?」



「だ、だから、しょんなこと言っても許してあげまひぇん!!」



効いた?!あの師匠に?




「我妻さんについて教えてくれますか...?」




「今回は特別....」




良かった、これで何とか戦える。




「あいつの異能は....」



「早乙女選手?スタジアムへ入場してください、すぐに来ない場合、失格となります」



そ、そんな〜....




「し、師匠行ってきます!」



思えば初日も、もしかしたら絢辻先輩や我妻さんと戦ってたかもしれないんだ、今更焦ったところで何もならない、覚悟を決めろ!僕!



「へぇ〜?逃げなかったんだ早乙女くん」



「僕は誰が相手でも一度受けた勝負は逃げはしないさ、それが師匠の教えだから」



師匠、客席で赤くなってるけど....




「師匠か、でも私も君みたいな無能力者に負けるわけには行かないんだ〜?」



「僕も負けれない、全力で戦おう」



どれだけ挑発されても冷静に戦うんだ、そうすればきっとなるようになるはずっ!




「それではCブロック2日目の初戦を行います、両者正々堂々戦うように。」



恐るな、逃げるな、屈しるな。




「ハジメ!!」



いつものように出方を伺おう




「私の異能、早乙女くんに見せてあげるっ」



「それは是非、見てみたいかな」



そんな堂々と使える異能、何の異能なんだ




「シャドウ・チェーン。」



影?!我妻さんの影が伸びて僕の影とっ....




「あれ〜?良く避けたね?今のは相手の影と自分の影で縛って相手の本体も縛る異能だよっ」



我妻さんの異能は影か...そうか?!ランニングに出たあの時、動けなかったのは単なる殺気じゃなくてこれだったんだ。




「じゃあ次行くよ〜!!シャドウ・スピア」



影が実体化して攻撃に....!近づけば動きを封じられる、どうする、自分の身体じゃなく影に意識を向けなきゃならない。




「あれー?早乙女くん逃げるだけなの?」



「我妻さんの攻撃、すごいね」



どうする、どうすれば....




「早乙女司!!!」




ん?この声は夜咲さん?夜咲さんは観客席にいるはずだけど....




「寧々に勝ちたいなら私に勝ちなさい!!」



我妻さんに勝つためのヒントなのか?



「ほーらほーらるなちゃんとお喋りしないで寧々と楽しく遊びましょ?早乙女くんっ」



「クッ....」



一撃喰らってしまった、僕は無能力者だから魔法や異能ですぐに治癒できないのに....




「うわぁっ!すっごい!早乙女くんの腕から血がぼたぼたぁ〜って!!キレイ....」




すごい狂気だ....けど、もう一度夜咲さんが言っていたことを思い出すんだ...我妻さんに勝ちたいなら、夜咲さんに勝つ....そうか!




「そーれ!シャドウ・スピア〜!!」



ここだっ!ここで決めなきゃ!



「影法師っ....!」



「早乙女くんが消えたっ?!どこどこ〜?!」




影の矢と我妻さんの視点が被って一瞬僕が見えなくなる、そこを利用するのが影法師、そうだ、夜咲さんに勝ったのもこの技だ!




「居たっ!!そんな近くに来てたんだね?でもね、寧々には勝てないよ、無能力者ガァっ!」



影をつかもうとすると思ったよっ!!我妻さんの異能力は確かに厄介だけど、過信しすぎて上手く使いこなせていないんだっ!!!




「ハァッ!!!抜刀・影紡かげつむぎ!」



師匠から手の皮が剥けるほど教わった影法師と合わせた抜刀術!!これはかわせないっ!!



「ウッ....まっ、まさか寧々が....寧々の影がより濃い影に塗りつぶされるなんて....」




我妻さん、君は強い。




「決まった〜!勝者早乙女選手!無能力者ながら初戦、二回戦共に完勝だ〜!!!」



腕の傷が思ったより深い....




「つかさ大丈夫か!」



「早乙女くん!!」




師匠、夜咲さん、それに蓮二も....あれ、意識が遠のいて....





「ふぁっ?!僕負けたの?!」



「起きたか、このバカ弟子が、お前は勝ったよ、少し血を流しすぎただけだ」




そうか、僕は我妻さんに勝ったんだ....




「あの子娘の助言があったとは言え天晴れだ」



「ありがとうございますっ!師匠!...痛ッ...」




やっぱ結構深いみたいだ...




「まだ安静にしとけ、2日後もあるんだ」




「はい、それより師匠、ここ医務室ですよね?」




さっきからドアがノックされてるような...




「ちょっと!開けてくださいよ!」




夜咲さんの声?ていうことはノックしているのは夜咲さん?




「ダメだ、私はつかさにまだ話がある。」




話?なんだろう。




「さぁ、今日お前が戦っていた相手となぜちちくりあっていたか、ゆっくり聞こうか...」




「ヒッ....!」




まだ許されてなかった....。

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