第11話:婿入り

我妻さんと戦ってから続けて2勝して決勝まであと二戦、ここまで来れたのが夢みたいだ、でもここで満足はできない、僕の夢はフェスタに出ることそれと同時に師匠のように強くなるため、そのためには勝たないと。



「おい司!」



「あっ、ごめん蓮二おつかれさま」



考え込んじゃってた....



「良いけどよ、お前いつもこの量走ってるのか?正直キツ過ぎるぞこれ」



「僕は無能力者だからね、蓮二やみんなのように体力を異能力でカバーできないからさ」



それにランニングは精神的なトレーニングにもなるし



「まぁ、こんだけ走ってりゃ無能力でもあの化け物みたいな体力と速さが納得できるぜ」



「そんな、化け物だなんて」



僕にはそれしかできないだけなんだけど....




「あっ、そうそう、とある女子生徒からお前を呼んで欲しいって頼まれてたんだ」



「とある女子生徒?」



一体誰だろう、女子といえば夜咲さん以外とはあまり面識はないけれど...




「ここで待ってろってさ!俺は先行くぜー?イチャイチャも良いけど授業遅れんなよ〜!」



「初対面の女子とそんなことしないよ!」



でも何の用事だろう。



「あっ、か、か、ら、だ...」



なんだこれ、体が動かない、それに声も....だけどこれ、どこかで....



「さーおーとーめくんっ」



やっぱり....我妻さんか....



「はぁっ、いきなり影で動きを止めるのやめてよ!もう、びっくりしたな〜」



「えへへっごめんごめん、でも早乙女くんは寧々のこと嫌いだから普通に来ても逃げられちゃうかな〜って?」



逃げないし...この間戦ったばかりで少し気まずいのはあるけど



「用件はなに?」



「うん...その、お願いがあって....」



お願いっ?!昨日の試合が納得いかないから今ここでって事は....



「そんな怯えた顔しないでよ!寧々だって普通にお願いするときくらいあるんだからっ!」



ふうっ、ならひとまず良かった。



「あのね....寧々の....」



「ね、寧々の?」



下僕になれ?!奴隷になれ?!どっちだ....




「お婿さんになって欲しいの....」



「え?」



我妻さんは今何を言ったんだ?




「だからっ....寧々のお婿さんになって!」



「えっ?!なんで?!」



あんなに目の仇にしてたのに?!




「何でって、早乙女くんと戦ってみて初めてやっぱり強いなって思えたし、それに優しいし」



この人は本当に我妻さんなのか?!あんなに狂気に満ちた感じだったのに....



「でも、僕は、てっきり我妻さんに嫌われてるのかと....それに僕より強い人は沢山いるし」




「寧々は早乙女くんのことが好きになっちゃったの、だからね....」



こ、これは告白?!



「死ぬまで一緒にいて。」



ん?



「いや、まだ付き合うとかも決まってないし」



「じゃあ付き合って。」



我妻さんの目がまた前みたいな狂気に満ちた目に....




「いや、でも....」



「でも...?」



な、何だこの試合の時より緊張感が....



「私の弟子に何してるっ!!!」



「ガギィッン!!!」



この声は師匠?!てことは今どこからか飛んできて我妻さんに入れたのって...




「よっ、つかさ」



「師匠?!今、我妻さんに一撃入れました?」



だとしたら我妻さんが心配だ、砂煙で見えないけど、師匠の一撃は耐えれるようなものじゃない



「心配すんな、ほら」



「定規?」



てことは今の一撃は定規でってこと?!師匠が戦う、いや今の場合だと一方的に相手に一撃を入れたのは久しぶりに見たけど...やっぱり格が違う。



「ほら、あの小娘もそこで伸びてるし、我が弟子がこんな奴の毒牙にかけられてたまるかっ」



「助かりましたけどダメですよ学園内で、非公式の戦闘は校則違反ですから」



高速では異能を使った戦闘の禁止、だけど多分さっきの一撃は異能を使っていない、だからこそ師匠の底が知れないな。



「チューした?」



「してませんよ!」



戦ったことあるだけでまだまともなコミュニケーションすら取ってないのに




「なら良かった、もししてたらこの定規が真剣に変わるとこだったぞー?気を付けろよ?」



「は、はい。」



我妻さんも恐いけれど、やっぱり師匠が一番恐いな...



「そういえば準決勝と決勝の抽選って今日だったか?誰と当たるんだかなー?」



これまでの選抜戦は対戦相手に関して直前にならないとわからなかったけど、準決勝と決勝は対戦相手が発表される、この2戦はその方が盛上がるからだとか




「まぁ、絢辻以外は無視でいいだろ」



「そんなことないんですよ!絢辻さん以外にも生徒会の人はもう1人いますし、それにもう1人の三年生だって、ここまで勝ち上がって来たんですから、油断は絶対できません」



この代表選抜戦はタダのラッキーで上がれるほど甘くない。



「昔っからの癖だぞそれ、お前がそんな感じに気を張ってる時は大抵危ない時だ」



「えぇっ、そんな癖ありました?」



自分より優れた相手と戦う前に気を引き締めるのは当たり前だと思うけど....




「見下すぐらいが丁度いい、お前は山に私と籠もっていた頃より数段強くなってるぞ」



「数段...?」



たしかにここまでの自分の成長、意識してなかった、そうだ、僕は泥臭くても無能力者でも強い異能力者に勝ってきたんだ。



「負けることを気にするな、もし負けたらまたあたしがまたきつい修行で締めてやる」



「わかりました、勝ってきます!」

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