第5話:優しさ

「それでは皆さん、2人一組になって下さい」



夜咲さんの決闘の件や僕が無能力者ということを公表した件が落ち着き、僕は対人格闘の授業を受けていた。



「おい司〜?こんなのやる必要あるのか?」



「授業なんだからちゃんとやらないとだよ蓮二、対人格闘は基礎の基礎なんだから」



それに、これは異能力者には大事な授業だし、もし仮に異能力者の強さとも言える魔力や妖力、それに霊力がもし尽きてしまった時、強さは普通の人間とほぼ同じだ。




「早乙女くん、私と組みましょう」



「え?!代表選抜選までやらないんじゃ?!」




それに今ここで夜咲さんと戦ったら他の人たちに何言われるか分からないし....




「異能なんて関係ない真剣勝負がしたいのよ」



「はぁ、分かったよ」



そんな真剣な表情で見られたら断れないじゃないか....




「いかせてもらうわよ」



「蓮二、審判よろしく!」



受けたからには全力でやらなきゃ




「そこまで〜!勝者つかさ〜!!」



「何故?!何故なの!!」



また圧勝してしまった....




「おいおい、氷の剣姫にまた勝ったぞあの無能力者、一体何者なんだあいつは....」



「無能力者が調子乗りやがって....」



冷やかしや罵詈雑言が多数聞こえますねえ....




「夜咲さん、ありがとう怪我はない?」



「えぇ、けどさっきのは何?!私が貴方を投げようとしていたのに気づいたら私が投げられていたわよ?貴方は本当に無能力者なの?!」




僕が今やったのは何の変哲もないただの合気だし、でも異能力者の夜咲さんにとってはそれが逆に魔法に見えるのかな....




「おいお前!調子に乗るなよ、夜咲さんもこんな無能力者には関わらない方がいいよ!」



「貴方たちはだれ?」



酷い言われようだな、まぁ仕方ないけど....




「僕たちといた方が強くなれるし、夜咲さんのような名門の家の人がいるべきじゃない!」



「それは私に対する侮辱かしら?私は無能力者の彼に正式な決闘で一度負けているのだけど」



夜咲さん怖っ....!




「いやそうじゃなくて....とにかく!コイツは所詮無能力者なんだから!僕達と居ようよ!」



「なら、貴方たちはその無能力者の彼に勝てるのかしら?もしそうなら考えるわよ」




何でそうなるんですかね.....




「い、いやそれは...」



「あら、彼を見下したのにその程度?」



煽らなくていいんだって!




「分かったよ、やってやる、おい無能力者!僕達と勝負だ!逃げるんじゃないぞ!!」



「おいお前らー、トラブルか?」



ほら先生来ちゃったし...トラブル続きだ、けどちゃんと言えば戦わずにすむかも!




「なるほど、そりゃ面白そうだな、なんなら私が審判をしようじゃないか」 



なんでそうなるの....




「いいか異能は使うなよ?打撃と組みのみだ」



やるしかない、か...




「始め!」



「行くぞ無能者!ハァー!!!」



こんなことして何になるんだか....



「そこまで!勝者早乙女!」



「すげーぞ司〜!4人抜きだー!」



少し派手にやりすぎたかな...?




「貴方達、彼の強さが理解できたかしら?」



「こんなのインチキだ!ていうかフェスタは異能を使うんだからこんなの勝負じゃない!」



君たちが喧嘩を売ってきたんじゃないか。




「こ、今度の代表選抜戦でもし僕達と戦うことがあれば、覚えとけよ!お前なんて異能を使えば瞬殺できるんだからな!この無能力者〜!」



確かに異能に恵まれた彼らにとっては僕の純粋な身体能力を使った格闘術はインチキだったかもしれない、けれど僕にとっても彼らの異能はインチキだ。



「ごめんなさいね、早乙女くん」



「夜咲さん酷いよー!僕が学園内で嫌われてるの知ってるでしょ??」



これでまた一つ恨みをかってしまったような気がするし...



「私は貴方の強さが羨ましい、けどその強さを知っているからこそ、あのような連中に貴方の強さを馬鹿にされるのが悔しいのよ」



夜咲さんは僕のことを考えてくれていたのか




「ありがとう、夜咲さんみたいな人が友達になってくれて良かったよ」



「そ、そんな!なによ改まって...」



蓮二もだけど



「僕の代わりに怒ってくれるなんて、夜咲さんはすごく優しい人だよ」



「わ、私は単純に気に入らなかっただけよ!」



顔赤いし...照れてるのかな?



「それでも嬉しい、本当にありがとう」



「わ、分かったからやめなさい....!」



からかいすぎちゃったかな




「よし、それじゃ授業は終わりだ、お前ら次の授業に遅れるなよ〜」


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