第16話 桜がカギ





けんちゃん………………………………








「あーー……す、すまない。人違いだ」

「……………………殿?」


…………あれっ?!人違いなの?

でも「のあ!」って言ってたよね?



「それで…………雑用の者に何用が…………」

「……………………………………べっ?!……す、少し待っていろ」


おーい。(多分)けんちゃーん。

さては用事なかったです?


何故か簾の後ろに去ってゆく(多分)けんちゃん、あっけにとられているシュウゾウさん、若干にかにかしながら赤い顔でうつむいている姉さん。


(何がなんだか………………………………………)



















それから5分後程。

(多分)けんちゃんが簾に影を現した。

…………………………ってあれ?何か、さっきと雰囲気違ってません?

こんなに威厳あったっけ。



「――――シュウゾウ。伯殿。少し席を外せ」


「御意」「ぎょ、御意」


















はええええええええええええええええええええええええええええええ!

シュウゾウさんと赤い顔した姉さんが帰っちゃったよ!


お殿様とふたりきり……き、気まずい………………………………………



「左門のあ」


不意に名前を呼ばれ、私は反射的にびくっとしてしまう。



がら……



急に簾の後ろからお殿様が出てきた。

けんちゃん…………………………



がらっ。



「どええええええええええええええええええええええええええええええええええ?!けんちゃんが二人いいいいいいいいいいいいいいいい?!」



「うるせーー!叫ぶなら桜厘山で叫べーーーー!」









 

 








「――――――と、そんなわけで今ここにいる」



「うー……ん。じゃあ最初にいたお殿様がけんちゃん?」

「ああ。2回目がコイツ。タケルだ」

「はあー、タケル君。うちの子がお世話になっております」

「誰がうちの子だ」


あの後、(ちゃっかり出ているが)けんちゃんが今までのことを話してくれた。

私はけんちゃんに会えたことが嬉しくて、自然と顔がにこにこしてしまう。


さっきシュウゾウさんと姉さんが席を外してから出てきたのが本当のお殿様・タケル君。次がけんちゃんだった。

何故かついてきたという星野君は、「綺麗な簾だなぁー」とか言いながらはしゃいでいた。

そのへんは気になるけど、他に聞きたいことが山積みなので放って置く。


「どうしてタケル君は現代……2021年にいたの?」


「空間移動したのだ」


「あ、タイムスリップ!私と同じですね!」

「たいむ……?よく分からないが、少し前に桜厘山で空間移動したのだ。もう5度程、過去や未来に行っている」


「「桜厘山………」」


そういえば、さっきけんちゃんも桜厘山に登ってここに来たと言っていた。

―――――――ということは!






「「桜厘山から、未来に戻れる……?!」」





「確実ではないが、そうだと思うぞ」


やったあーー!未来に帰れるんだね!


……と、そのとき。


「殿。物音が聞こえますが、ご無事ですか」

「ああ。少し足を滑らせただけだ」


………そういえば、シュウゾウさんを待たせてるの忘れてたよ!

かなり騒いでたけど大丈夫かな…………………………




「足を?!」



ガラッ!


げ。



「のあ?大丈夫か?!」



どすどす。



げげげ。




「「「「「「………………………………………………」」」」」」




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