第12話 米さんが厳しい

「ムザウさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

「…………まて、のあ……速い…………」

「小走りです、姉さん……………」


そんな感じでお城の門に着いた私と姉さん。


「あっいた!ムザウさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー――」


「誰だ曲者おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「私です!左門のあ!雑用係です!」

「そんな奴は記憶におらあああああああああああああああん!」


………忘れられてる!ショック!


「…………のあ。本当に知り合いか?」

「護衛さんなので、きっとたくさんの人に会ってると思うんです。だからですよ。きっと」

心配そうに小声で聞く姉さんと、忘れられていたことをそんな理由でもみ消そうとする私。



「……………………アイツか?いやあれは上半身裸の男……」


ムザウさんは真剣に思い出してくれてるけど……

上半身裸の不審者と間違えられる私って一体…………。




「―――紫座甕むざう様。その子は一週間前の女子みなごでしょう。忘れっぽいんだから」

よね


急に出てきた米――と呼ばれた女の人は、ふふっと上品に笑った。


「あのう……何で私のことを知ってるんですか?」

「もちろん、見てたからよ。一週間前」


見てた?


「のあ。あの人が着物の人か?きれいだな」

「へ?」

小声でささやく姉さん。

それでやっと、


「あ!貴女、この着物の人で……す、か?」

「着物の人?……ああ!その着物ね!」

やはり、この米――という人がこの着物を貸してくれた人らしい。


「遅くなりましたが、着物を貸していただいてありがとうございます!」

「どういたしまして。…………………そうねぇ……ちょっといいかしら?こんなところで話すのもあれだし、うちに来なさい」


「「?」」








――紫座甕邸――


「昨晩の御味噌汁のことなんだけど……」

「あ………………」


何の話か分かりました……


「そのね……味付け……は」

「姉さんです…………」


昨日の夕食のお味噌汁、料理&味オンチの姉さんが味付けしたんだよね……


「それにしても、何で米……さんがお味噌汁を食べたんですか?」

「そりゃあ手伝いよ手伝い。雑用係が頼りないとかで」


「「うっ…………」」




「―――――――そこで!」





米さんが私たちをびしっと指さす。





「――あなた達には、私のもとで修行してもらうわ!」





「「え……ええええええええええええええええええええええええ?!」」


――――こうして、地獄の修行が始まったのだった。














「―――こら!里芋は細切りじゃない!御味噌汁を作ってるのよ!」


「うるせー!私には私のやり方があるんだ!」

「姉さん!」


にこにこしていた米さんは、意外にもスパルタだった。

姉さんが反抗し、私が宥める。その繰り返しだった。


姉さんがひどいせいで、私の料理オンチがマシに思えてくるよ…………








「夏陽ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


地獄の修行を終えた私たちは、お城へともどった。


「夏陽!私、卵焼きが作れるようになったよ!」

「私は一人で味噌汁だ」


なんと、米さんのスパルタ指導のおかげで、私は卵焼き、姉さんはお味噌汁がまともに作れるようになったんだ!

米さん、困ったことがあればいつでも来ていいって。姉さんはもう行かないって言ってたけど。


「すげえな!お前ら、どんな魔術使ったんだ!」


……………驚きすぎて逆に悲しいです……


「護衛のムザウさんの奥さんに教えてもらったんだ」

「ああ。米さんか」

「ん?あれ?何でさん付けなのかな?何かあるのかなあ?」

「うぜえな!何もねえわ!お前らが来る前同じ雑用係だっただけだよ!」


すると、夏陽をイジる私に姉さんが話しかけた。


「おい、もう夕刻だそ。晩メシの準備しなくていいのか」



「…………忘れてたあああああああああああああああああああ!」










「…………どうですか」

「ああ。美味い」


「やったあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


私の作った卵焼きが、夏陽おふくろに合格をもらえたよ!

――その後、姉さんが味付けをしたお味噌汁も見事合格したんだよ!




「米さんのおかげですね!姉さん!」


すると、姉さんは照れながら「ああ」と言ってくれたのだった。



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