第2話
夢眠の過去
「はぁー。お前、早く死ねよな」
また、同じこと言われた。それは僕を産んだあの女(ひと)も言ってた。
僕は毎日嫌な事を
言われ、殴られ、蹴られてすごい痛いはずなのに
痣があまり見えないところに付くから誰にも知られない。
とても嫌いで、嫌で、逃げたいほどだったのに名前ははっきり覚えてるんだ。
花影綺羅珀。
その人は本当は女の子が欲しかったが、
僕が生まれた。
男の子が生まれたのが嫌で嫌で
その腹いせに夢眠と、女の子っぽい名前をつけた。
要するに、嫌味でつけた。
僕が小学校に上がった時。あの女(ひと)が男と別れてもう一度結婚した。
でも僕は中学に上がるまで会わせてはもらえなかった。
小学校は病気だからと月一でしか通わせてもらえなくて、
中学もそうで卒業してから家を出てバイトをしながら自分が決めた高校に通い始めた。 それまではずっと『僕は1人で生きていくんだ』そう思っていたけど。
そこで保育所の頃一緒だったこいつ(夏儺)に再会。
(とは言ってもたまに砂場遊びをするだけの仲だった)
僕は小中と全く登校していなかったから全くわからなかったし、
どうしたら気軽に話せるのかがわからなかったけど。
こいつ(夏儺)が気軽に声をかけてきた。
そこで僕は初めて『1人ではない』事を知り、
初めて『好き』という感情が知れた。
でも周りを見ていると
それが普通ではないことくらいすぐに分かったし、
僕にはあの女(ひと)がいるから自由なことはできない。
だから、今年の人生初の、
『修学旅行』でできる範囲の
『したい事』をやり込んで
ー僕は死ぬ。
その為に1人家を出て、バイトを掛け持ちして生活をしながら
自分の火葬の手続きをしてきている。
僕がこいつに本心を伝えたり、
もし付き合えたとしてもこいつを残すことになるから、こいつには何一つ知られたくないし、
知らせたくないし、嫌われたくもない。
そう思えたのは、夏儺自身から伝えられた話があったから。
一ヶ月程前。
僕らは昼食中になんとなく家の(殆どこいつの)話になり、
勝手にこいつが話し始めた。
「僕さー。両親いないんだよねぇー」
その時も何気なく素通り。
したが。
「なんかね、僕もわかんないんだけどさー。
夜、両親が仕事帰り事故に遭って母さんだけが『先に』死んでさ。
その後、自分に非があったんじゃないかって残って鬱になった父さんは
後を追って自殺しちゃった。
酷いよね、僕を置いて2人だけって。
ついでに僕も殺してくれればよかったのに」
僕はその言葉に一瞬心臓が止まった気がした。
僕と、少し似ている気がしたから。
…自殺願望があることが。
「え、ちょっと、みんなどうしたの?そんなに固まって」
その話はクラスのみんなに聞かれていたみたいで、
この日からこいつはみんなから毎日声をかけられる(心配される)ようになった。
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