第3話

修学旅行



「夢眠ー?なんか、顔色悪くない?やっぱバイトのし過ぎじゃないの?」


「煩いな。気にしないでよ」


そんなに近寄るな。


本心を言ってしまいそう。



「今日からは修学旅行なんだから、無理しないでよー?」



そう。今日からせっかくの修学旅行なのに、


体調がとても悪い。



「どした?むーくん、体調悪い?」



夏儺のせいでこの人からむーと呼ばれたり、話しかけられることが多くなった。



「いや、大丈夫」


「や、そうも見えないからみっくん、お薬あげたら?」



ここの高校は男子校だから女子はいないはずなのに、と思ったらクラス一の美少年

蒼葉架瑠(あおばかける)くんといつも一緒にいる

学級委員長兼保健委員(この学校は人数が少ないから兼業している人が多い)

冴枝季光忠(さえきみつただ)だった。



「そうだな、これ、渡しておくから常備しとけ」


「…ありがとう」



話が終わると2人とも満足そうに離れて行く。



「あの2人、優しそうに見えるでしょ?

でも、そうじゃなくて

優しくすることをして褒められたい

2人組なんだよ。

意見が合うから付き合ってるんだよねぇ。‥羨ましいなぁ」



ふーん。そうなんだ…ん?



「付き合ってる?」


「うん。見た感じ、架瑠くんがタチだねぇ。いいなぁ。僕もされてみたい」


「は?お前、そっち側なの?」



というか、蒼葉くん可愛いのに受けじゃないんだ。



「んー?言ってなかったっけ?僕はゲイだよぉー」



…。衝撃的な。



「夢眠は、普通っぽい感じ?」


「んー、多分違う」



この修学旅行が最後だから、色々と喋っちゃうな。

…まぁ、いいか。



「んー?どゆこと?」


「ずっと夏儺が話してたから、僕の話したことなかったもんな」


僕は大好きな空を見上げた。



「僕、自分を産んだ人に虐待?

されてたからだと思うんだけど、女の人が苦手でさ」



途切れたところでバスが動く。


それから休憩まで僕は夏儺に昔の話を聞かせた。


それを聞いた本人はびっくりするようなそぶりも見せず、


『そうなんだ』

と言い、


いつも通りに接してきた。


だが、班行動となったとき。



「ねーねー。夢眠と遊んできていい?」


「いいよー。でもちゃんとすぐ連絡取れるようにしておいて、時間は厳守な」



わお。軽く許された。



「むーくん、ちょっと服買えよっか」



そう言ってまずは僕を服屋さんに連れ込んだ。


さくさくとファッションに疎い僕でも分かる

くらい良い選び方をし、

自分も着替え、それを全て夏儺が買ってくれてそのまま店を出た。



「ありがとう、服買ってくれて」



夏儺はいつものように軽くリズムが狂っているスキップをしている。



「いーよー。

お金なら丸4日遊べるくらい持ってるから〜。

それより、さっき僕、むーくんに普通かどうか聞いたでしょう?」


「あぁ、そうだね」


「…夢眠が『違う』って言ってくれて嬉しかった」



スキップをやめて足を止め、僕に目線をくれる。



「本当は僕、保育所の頃から男性ばかり好きになるんだ。主にむーくんだったけどさ、ずっと体験してみたいなって」



…は?そんな前から?逆にすごいや。



「もし、夢眠が嫌じゃなかったら、今から行きたいんだけど」



そういって手を差し出してきた。


…嫌だったらこの手を握るなってこと?



んなことするわけないじゃん。



迷わず手を握り、

黙って走り始めた。

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