第48話 ホッとしました

「おい、お前! その人はお客様だ。関係無い人に絡むのはやめろ!」

 私とガラの悪そうな人の間に入って止めてくれたのは、いないと思っていた奥の店員さんでした。

 エプロン姿で私の前に立って守ってくれる形になり、ちょっとホッとしました。


「オレだって石原の野郎の居場所さえわかれば、こんな真似はしないさ。本当に居場所を知らねぇのか?」

 それでもさらにしつこく聞いてくる、ガラの悪そうな人。それに嫌気が差したのか、奥の店員さんは男の耳元で何かをささやいて、すぐ離れます。

「おれがわかるのは、そこくらいだ。そこにアイツがいなかったら、それこそもうわからない」


 そこでとりあえず納得してくれたのか、ガラの悪そうな人は、後ろに向いてくれます。

「……まあこんなもん、か。邪魔したな」

 そう言って人混みの中に消えて行きました。

 私は今度こそホッとして、その場にしゃがみこんでしまいました。


「だっ、大丈夫ですか? とりあえず座りましょう。椅子、出しますね」

 奥の店員さん、言うが早いか、お店のシャッターを少し開けて椅子を引っ張り出して、私を座らせてくれました。


「はぁ……。緊張した……」

 私は、なんとも情けない声しか出せませんでした。こんな危険を感じるのは、なんとも久しぶりです。

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