第32話 コーヒーの書籍の良し悪し

 通勤電車に乗ってる時は、いつもなら手持ち無沙汰で広告などを見ていたりしましたが、今はスマホに入っているネット書籍があります。このコーヒーの基本の本を読む事で、時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。

 読み進めては、分からない事が出てきたら前へ戻る。そんな行きつ戻りつを繰り返しながら、コーヒーの本を読んでいます。


 そして、いつものように午前・

午後の仕事を終えて、一旦帰宅してから、また改めてコーヒースタンド『ピーベリー』さんにお邪魔する、いつものルーティンをこなす訳です。

 今日はネット書籍もある程度読み進めてますから、奥の店員さんともう少し込み入ったお話が出来ると思い、ちょっとウキウキしながらお店前まで進んで行きました。今日はピッキングの作業が早かったのか、もう手回し焙煎機を取り出して焙煎の準備に入っていました。そこには、他に見学をしている年配の男性もいらっしゃいました。

 ここで私は思い切って、奥の店員さんに話しかけます。

「今日の焙煎も『フルシティ』くらいですか?」

 普段はそんな言葉が私から出てくることが無かったので、「えっ」という表情と共に私の方を見てくれてました。


「今日はなんだかいつもと違いますね。何かありましたか?」

 私に興味を持ってくれたのでしょう。奥の店員さんは私に質問を投げかけてくれました。そこですかさずスマホを開いてネット書籍のアプリを立ち上げ、コーヒーの本の表紙の画像を奥の店員さんの方に向けました。

「ちょっと本を読んで勉強をしている所なんです。まだまだザッと眺めてるだけですけど、ちょっとはわかってきました」

 誇らしげに私が言うと、そのやり取りを横で見ていた別のお客さんが、そのネット書籍の表紙を見て、すぐに言葉を上げました。

「あー。その本、ずいぶん昔のヤツだわ。そこに掲載されてる表通りの喫茶店、3年前には閉店してたはず」


 ええっ? 本が古いものなんですか? だからアプリでもゼロ円で読めたんですね。

 そこから奥の店員さんが、さらに続きを語ってくれました。

「私もその本は持ってますよ。初心者用にはいいですけど、ちょっと時代遅れぎみかな。『エアロプレス』とかの新しい機材は載ってないですし、『2050年問題』とかもまだ扱ってない本ですからね」

 なんだか肩透かしを食った感じになってしまいました。今の新しい情報が掲載されていないのでしたら、読んでてもコーヒースタンドの周りの人たちとお話が合わないのでしたら、意味が無いですから。


 そんな肩を落とした私の様子を見かねてか、奥の店員さんはすかさずフォローしてくれました。

「コーヒーの基本の所は、その本でも充分に理解ができますよ。新しい知識やわからない事は、ここで聞いていってもいいですから」

 奥の店員さんの優しさに触れられて、ちょっとショックな反面、嬉しい誤算になってくれたようです。

 やっぱり無料の情報だけじゃダメみたいですね。ちゃんと本は本屋さんで買おうかなぁ。

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