第6話 親睦会に行く連絡
という事で次の日の午前休憩。
私は遠藤さんに、昨日のイケメン店員さんからのお話を伝えて相談しようと思った訳で。そうしたら遠藤さん、驚いたように私を見つめ、こう声を上げました。
「なんで一緒の時に言われなかったの!」
「アー、ナンデデショウネー」
機械音声みたいな棒読みで返答をしてしまいました。これに関しては、私は悪くありません。たまたまタイミングが悪かったとしか言いようがないです。そして遠藤さんは「いつ? どこで? 何人くらい参加するの?」と矢継ぎ早に質問を投げかけてきます。私の返答はと言うと、
「お客さん同士の親睦会……って言ってましたけど……」
と、聞いた断片的な情報だけを伝えました。たったそれだけなのですが、遠藤さんはずいぶんとノリ気でした。
「なによそれ! 行くしかないじゃない! ああっ、あのイケメンとお近づきになれるなんて、なんて幸せ……っ」
「ははは。じゃあ、行くって事で」
という事で、お話の主導権は遠藤さんに置かれたまま、その親睦会というモノに行く事になったのでした。
お昼休憩になってから、私と遠藤さんは連れ立って、いえ正確には遠藤さんに私が引きずられる形で、
まだ12時を少し回った所でお店に到着しましたので、まだ行列はできておらず、すぐにお店前に行く事ができました。そこでイケメン店員さんが、先に私たちに声をかけてきました。
「あれ? いらっしゃいませ。今日は早いね」
「あっ、あのぅ、親睦会をやるって聞いてぇ、あたしたちも参加したいなって」
イケメン店員さんと遠藤さんの会話が始まり、私は置いてけぼり状態です。
「お、参加してくれるんだ。ありがとう。じゃあ二人で参加ね」
「はいっ、お願いしますぅ」
「来月の第二土曜日の午後6時に、この店の前で集合ね」
「はぁい」
いそいそと手帳を出して、そこに書かれてあるカレンダーに、親睦会の集合日時を書き込む遠藤さん。何とも言えないとてもイキイキした表情でした。そうしてやり取りをしていると、後ろにお客さんの列が出来始めていました。3人後ろに並んだ所で、そろそろコーヒーの注文をしてその場から離れようと、私は遠藤さんに促すように、その肩をトントンと軽く叩いて合図して黒看板のイーゼルを指差し、遠藤さんに注文をするよう無言の仕草をしました。
それでわかった遠藤さん、後ろに並んだお客さんとイケメン店員さんを交互に見て、一瞬パニックになってしまったのか、「え、ええと……」とちょっと迷って言葉が出てこない状態になってしまった様子でした。すかさず私は
「深炒りをお願いします」
と注文を入れると、反射のように遠藤さんも「あ、あたしも!」と注文を入れました。そんなやり取りがおかしかったのか、イケメン店員さんは苦笑いをして「深炒りふたつね」と、私たちの注文を繰り返して確認して、奥の店員さんに「深炒りふたつ、よろしく」と通してくれました。
それを奥で聞いていた店員さんは、その注文が通りきる前にすでにコーヒーの豆をミルで挽いていて、ドリップのためにお湯を注ぐ直前まですでに終わっていました。手際の速さはいい仕事の証ですね。
「おまちどうさま。深炒りふたつ、どうぞ」
「ありがとうございます」
イケメン店員さんから手渡されたコーヒーを持って、今日は脇に置いてある椅子に座って、コーヒーを楽しむ事にしました。
今日のコーヒーは以前のコーヒーと比べて、香りにナッツのようなニュアンスのあるコーヒーでした。以前のコーヒーも美味しかったですが、今日のも美味しいコーヒーです。
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