ぺったんこ
ラテピエロ
第1話ぺったんこ
「ジリリリリリリリリ」
目覚まし時計の音が部屋いっぱいに鳴り響く。
R氏はなんとか目を覚ますと途端に異変に気がついた。
何か薄っぺらくて茶色い毛の塊のような物が自分の足の上で跳びはねているのだ。違和感はまだ他にもたくさんある布団をかぶっていたはずなのに紙ぐらい薄いものが身体の上にかかっている。ただ不思議と暖かさはある。
R氏は自分の手があり得ないぐらい薄いことに気づいて、茶色い毛の固まりは愛犬のトイプードルであることに気づいた。
部屋の中を見渡すと全てが平たく見えるのだ。
夢だと思ったがそうでもないらしい。意識ははっきりしている。
もしかしたら自分だけじゃなく全ての人がこう見える、もしくは本当に平べったくなってしまったんじゃないかと考えてもみたが、3分の1ほどの高さになった窓を開けて外を見てみるといつものように人が往来している。
会社に通おうとしたが、外に出るのすら時間がかかる始末で、仕方なく上司に連絡し、今日は病院に行くことにした。
とはいってもどこが悪いのか分からずとりあえず眼科に行くことにした。
運転などできるわけもなく、タクシーを呼び、眼科についた。
「異常は何もないですね。」
医師に告げられ、次は山奥にある精神病院に行った。
「正常であるとしか考えられないのですが、、、」
そんなはずはないと思いながらも、どうしようもなく肩を落として帰った。それからほかの病院もまわったが、異常は見つからず、一年が経った。
一年がたつと案外慣れてきた。
今日は職場の同僚とバンジージャンプをしに来た。いや、R氏は極度の高所恐怖症のため、ついていくのすら嫌がったのだが、見てるだけでも良いと言われて無理やり連れてこられたのだ。
「思ったより高いな、、、」と同僚がビビっている中、
「そうか?」
R氏は反対にそんなに怖く感じていなかった。
「俺も飛ぼうかな、、、」
同僚達は目を丸くして驚いた。
そんな驚きをよそにR氏はバンジーを楽しんだ。
高所恐怖症を克服したことも相まってとても良い気分で帰路についた。
自宅のマンションに着き、ベランダでワインを片手に夜風に当たる、、、
「昨日午前4時ごろ、40代男性のRさんがマンションの敷地で遺体で見つかりました。飛び降り自殺をしたとして警察は調査を進めています。」
ぺったんこ ラテピエロ @1191
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