第42話 ボーイズラブ小説を投稿すること
ボーイズラブ(BL)小説を商業誌や投稿サイトのコンテストに応募するようになりました。
ボーイズラブとは、男性同士の恋愛を扱った作品群のことです。
商業誌の公募に一回、投稿サイトのコンテストに数回応募して、一度投稿サイトの短編コンテストで佳作をいただきました。あとは全滅です。
そこから感じたことを書いていきます。
BL小説の紙書籍の市場は年々縮小して、代わりに電子書籍の市場が拡大しています。
投稿サイトの拡大によって、投稿サイトのランキング上位の作品を紙書籍にすることが増えました。が、出版社や投稿サイトのコンテストでも新人を発掘・育成しています。
BL小説家としてデビューするには、投稿サイトのランキング上位を狙うという方法があります。しかし、ランキングに入るには投稿サイトの傾向を掴む、コンスタントに更新する等のきめ細かい努力が必要です。
投稿サイトの流行や更新の速さについていけない作家には、じっくり時間をかけられる出版社のコンテストが有利となります。
それでは、出版社のコンテストでデビューするにはどうしたらいいでしょうか。以前日記で書いたことを引用します。
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古賀史健さんの『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』に、「価値の三角形」という図があります。売れるコンテンツに必要な三つの要素として、
情報の希少性
課題の鏡面性
構造の頑強性
が挙げられてました。
「情報の希少性」は「ふつうの人が知らない、新しい情報であること」、「課題の鏡面性」は「その物事を我が事として捉えられるかどうか」です。
なのでこれを小説に置き換えると、
オリジナリティ(取材力)
感情移入できるキャラクター
文体
になるかと思います。
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商業誌で求められるのは、この三点のバランスが取れている作品だと思います。
長年商業誌で同じ題材(男性同士の恋愛)を書き続けるには、取材力が必須となります。
取材力とはインプットの能力、かつ情報を的確にアウトプットできる能力です。
そして感情移入できる魅力的なキャラクターも重要です。
次にそれらを支える構成力や文体が必要になります。
自分の反省点としては、オリジナリティ(インプット)とキャラクターの魅力が足りないということです。これを今後の課題にしたいと思います。
1990年代から2000年代初頭のBL商業誌の公募では、「SF・ファンタジーは投稿作としては不利」と但し書きがつけられていました。
今のファンタジー全盛のBL業界では信じられないことかもしれません。が、SF・ファンタジーなど世界観を重視する物語は、枚数の制限がある投稿作では不利だと思われていたのです。
現在BL小説でもファンタジーが全盛となったのは、
なろう系ファンタジーの隆盛
オメガバースの誕生
ブルー・オーシャンの開拓
などが主な原因であろうと思います。
まずは投稿サイトの「小説家になろう」「カクヨム」などによって、ファンタジーの敷居が下がりました。
私がファンタジーを書けずにいたのは、先人のファンタジーのレベルが高かったからです。「仏教がない世界で仏教由来の言葉を使うな」という文章を読んで、自分にはとてもそんな芸当はできないと思っていました。
なろう系ファンタジーでは、先人のファンタジーの約束事を踏襲しない作品が増え、結果ファンタジーを書くハードルが下がりました。
2010年代前半に海外から日本へ伝わったオメガバースも、男性の妊娠と出産というSF的な設定でBLのファンタジー化に貢献しました。
ブルー・オーシャンは、先ほどの引用の「情報の希少性」にあたります。
そのとき語られていない新しい分野や高次元のレベルに、物事は進化していきます。
BL業界の規制(?)によって少なかった(実力のある作家にしか許されていなかった)ファンタジーが、ブルー・オーシャンであったのです。
それでは、今後どのようなBL小説を投稿すればいいのでしょうか。
オーソドックスなBLの継承
ブルー・オーシャンの開拓
高次元のレベルの開拓
現在のBL小説は、過去に積み重ねられてきた萌えのデータベースの継承です。
現在の商業BLは、たいてい題名で萌え要素が提示されており、読者は題名によって物語をプレゼンされます。
萌えのデータベースの組み合わせで新しい配合を作っていくこと。
自分の作品が今のBLの作風に合っている方は、従来のデータベースを継承していくのが一番の近道だと思います。
ブルー・オーシャンの開拓とは、新しい分野や開拓されていないジャンルを目指すということです。
新しい分野だとAIとか、いまだに開拓されていない分野だとSFや歴史物、ライトBLなどがそれに当たると思います。
SFや歴史物などは基礎知識が必要なので難しい分野だと思いますが、今後なろう系ファンタジーに起こったような「一般化」が起こるかもしれません。
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高次元のレベルの開拓も、ブルー・オーシャンの開拓の変形です。
『ボーイズラブ小説の書き方』(花丸編集部編 2004年)に、「ボーイズラブ小説を書いて投稿するなら、直木賞をめざすくらいの気概を持ってほしい」と書かれていました。それを読んだ私は「BLで芥川賞や直木賞が取れる小説を書けばいいんだな」と思いました。
一般小説に負けないレベルのBL小説を書くこと。
繰り返しになりますが、そのとき語られていない新しい分野や高次元のレベルに、物事は進化していきます。
以前は主流ではなかったファンタジーが隆盛になったように、今後はこれらの新しい分野の小説が流行っていくかもしれません。
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