第28話 文体診断で文豪の文体を診断してみたよ まとめ

文体診断で文豪の文体を診断してみたよ まとめ


 ウェブに文体診断ロゴーンという、文章がどの作家さんに似ているか(似ていないか)、または文章の読みやすさや個性などを診断してくれるサイトがあります。ウェブ作家さんならご自分の文章を診断されたことがあるのではないでしょうか。

 私は文豪の文章をロゴーンに診断してもらい、その結果をnote に投稿しました。各作家の結果はnote の記事を見ていただくことにして、今回はそのなかで気づいた点を挙げてみます。


■ロゴーンの成り立ち


 ロゴーンは六四名の著者から各一作品を選んで解析し、そのデータを元に文章を診断するというシステムになっています。

 あと、六四名の作家の散布図があり、似た文体の作家が近くになるよう配置されています。

 散布図の外にいけばいくほど、よく言えば個性的、悪く言えば誰とも特徴が重ならない作家であるわけです。

 一致指数ワースト3(文章が似ていない作家三名)にダントツで出てくる岡倉天心は、散布図の左上で名前が外にはみ出しています。よほど作風がワンアンドオンリーなのですね。


 そんなロゴーン先生ですが、一度に解析できる文字数が五千字なので、同じ作品でも文章が変われば違う結果が出ます。

 それを考慮して、以下のお話を読んでいただけるとありがたいです。


■太宰治ラブ


 ロゴーン先生の愛なのか、太宰先生の文章に特徴がありすぎるのかわかりませんが、太宰治の作品はわりと本人評価が出やすいです。

 サンプルは『桜桃』ですが、『人間失格』でも一致指数ベスト1が太宰治でした。文章の表現力や個性なども、高評価が多いです。


■芥川龍之介にちょっと冷たい


 芥川先生の代表作『歯車』の文章の個性に「E 平凡」がついて驚きました。他の作品でも個性ですこし劣る結果が出ています。表現力はすばらしいです。

 芥川先生の短編は無駄のないシャープな文体が特徴なので、長編の作品に比べると個性や語彙の点で不利になるのではないでしょうか。


■夏目漱石にさらに冷たい


 あまりにも夏目先生に本人評価が出ないので、新潮文庫のすべての作品をロゴーンに診断してもらいました。が、本人が一致指数ベスト1になったことは一度もありませんでした。2番目が一作、3番目が一作という悲しい結果です。

 旧字体と新字体で試してみましたが、大きな違いはないようです。

 夏目先生の一致指数ベストには森鴎外、中島敦、有島武郎、井上ひさしなどが多く登場します。器用な作風なのか、癖のない文章なのか……散布図では中島敦に近くて森鴎外や有島武郎とはすこし離れています。やはり漢文がベースなのですね。


■岡倉天心にもっとも冷たい


 散布図からはみ出ている、ワンアンドオンリーな作風の岡倉天心ですが、著書『茶の本』の一致指数ワースト1が岡倉天心です。本人なのに。

 岡倉先生のサンプルは『美術上の急務』だそうです。どんな本なんだろう。

 岡倉先生は、日本の美術や文化を英語で海外に紹介した、英語が堪能な方だったようです。


■文豪の文章に近づくには


 文豪の文章に近づくには、「文章の表現力」と「文章の個性」をAに近づけるといいでしょう。どの文豪もこのふたつは高評価でした。

 「文章の読みやすさ」は文章が短いものが高評価で、「文章の硬さ」は文語調であればあるほど硬めに出るようです。このふたつの要素は文章によって使い分けるといいと思います。

 私の体感ですが、語彙を使って凝った文章ほど高評価が出やすく、長編などで平らかに書いた文章は評価が低かったです。

 ロゴーン先生の特集でした。創作の参考になさってください。

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