最終章
怖いなにかにモテ過ぎて
よく晴れた日曜日の朝。
俺は体を伸ばしてベットから起き上がった。欠伸をしながら立ち上がると足を引っ張られる。ゆるがいつもの様に俺を掴んでいる。むにゃむにゃと言いながら二度寝に引き摺り込もうとしている。それから逃れれながら一階に向かう。
ゆるは相変わらず俺に似ずに可愛い。垂れた唾液すら愛おしい。俺も唾液が垂れる。それを拭く。
何かを忘れている様だが気のせいだろう。俺は家にいて、いつもの様な朝である。
一階リビングには食事が置かれている。妹が作ってくれたらしい。不器用ながらも一生懸命作ったらしい。芋の煮っ転がし、焼き魚、味噌汁、ご機嫌な朝食である。
優しい気持ちになりながら座る。TVを付ける。特に世間がどうなろうとどうでもいい。録画していた深夜番組を流す。
俺が座る位置から見えるのは広い窓。明るい日差しが入り込んでいる。目が少し痛い。夜行性という訳ではないが朝は苦手だ。俺は録画されたそれと食事を交互に見ながら進める。これが癖なのだ。
食べ終えても、嫌に腹が減っていた。本当にお腹が空いて仕方がない。朝食を全て食べ終えてもまだ足りない。もっと食いたい。
欠伸をしながら俺は服を見る。何故か外行きである。昨日着たまま寝てしまった。どこに行ってたんだっけ?そう言えば・・・恋愛探偵と・・・
まあいいや。
それよりお腹が空いている。凄く美味しい食べ物を食べ損ねた気分だった。俺は靴を履いて、外に出る。日曜日の朝だ。人気はない。コンビニが近くにあるからそこで何か買おう。
歩いていると近くのカラオケ店にテープが付けられている。警察が捜査の時に使う黒と黄色のアレである。何かあったのだろうか、個人経営だったからもしかしたら強盗にでも・・・頭が痛い。何かを忘れている。後頭部を触る。腫れている。殴られている様である。何があったか知らないが頭が割れる勢いで殴らないで欲しい。
殴られる?誰に?
近くのコンビニに行くとそこには鳩がいた。だが、俺に気がつくと口を手で押さえて走って去る。何かしただろうか?だが先に食事をしないといけない。頭が回らない。俺は大量のおにぎりとエロ雑誌を入れる。そして支払ってすぐ様、近くのフードスペースで食事を始める。
雑誌を読みながら少しでも性的興奮しそうな映像を脳に入れる。これをおかずに食事を口に入れる。これが俺の食事なのだ。昔からそうなのだ。ポルノを読みながらじゃないと味がしない。食事をする時は必ず異性を性的な目で見ないと食事が出来ない。
したくししている訳じゃない。何も考えず食事をすると全く味のしないペーストを食っている気分になってしまう。一回直そうと続けたが三日目で吐いてしまった。こんな事誰にも話せやしない。
そう俺は・・・周りにいる彼女達を性的な目で見ている。文字通りおかずにしているのである。最悪だ。だが生きる為に仕方が無くしているのだ。こっちだって隠すので必死なのだ。
泣きそうになりながら腹に物を入れる。ようやく落ち着く。脳が回転し始める。そうだ。俺は恋愛探偵に頼んで、森羅まほろについて調べて貰って、そこで俺は・・・
だめだ。足りない。もっと俺に食事が必要だ。こんな偽物じゃだめだ。反吐のようなむせ返る。泥のような女の性が無いと飢える、このままだと・・・俺は・・・飢えて死んでしまう。舌が出る。呼吸も荒くなる。
コンビニから出る。このまま本屋でも行こうか。いっそのこと。家に帰って。もしくは鳩の家で。
そんな悪い想像が頭を巡る。
だが、俺の嗅覚は芳しい香りを見つける。それは女の香り、性の香り、血の香り。すぐ様それを探す。ああ、俺は元に戻っている。背中が疼く。本来の動きをする様に走り出す。まるで飛ぶ様に走る。そして、見つける。俺が通う学校だ。ここに女がいる。
日曜日である誰もいない。本性がむき身になる。
体が震える。陰茎が反り立つ。何故だ。何だ。何でこんなに俺は興奮している。いや、違う。俺は何故こんなに飢えている?
俺は走る、走る、走る。一階、二階、三階。そして、扉を開ける。
そこには恋愛探偵が拘束されていた。あの末路の夜、その再現。だが違うのは、彼女は手足を椅子に括り付けられている事。そして、その周りには森羅まほろと春日鳩、そして南足ゆらがいる。
彼女達はいつも通りの雰囲気だった。
森羅まほろは爪を噛み、少し汚れた黒い制服を着こなしている。だが相変わらず神経質な笑みを浮かべて、俺に媚びた顔を見せている。
春日鳩はホットパンツと白のTシャツを着ている。スポーツブラが透けて見える。下の方も健康的な太ももがしっかりと見える。
そして南足ゆらは寝巻きだった。昔買った子供物の寝巻き、だが既に体は成長しており張り裂けそうな胸や尻で目が眩む程性的だ。
美味そうだ。
「はは、お兄ちゃん。すっごい顔。女の子をそんな顔で見ると警察に捕まるんだよ」
「しんゆーのそういう顔は嫌いじゃないけど、それは二人の時に見たかったな。俺は何だってしてあげるからな」
「いいいい、卑しい女達だよ。わわ私なら望む物も用意出来る。どどどどんな玩具がお好みかな」
彼女達が好き勝手喋る。脳味噌が蕩ける程、甘い声。早く食いたい、早く貪りたい。早く、早く!
そんな時に恋愛探偵の一声で意識が戻る。
「郭公近友!!興奮を抑えたまえ!!それは彼女達の罠だぞ!!君が彼女達を貪れば、それで君は元に戻れなくなるぞ!!」
「訳の分からない事を、据え膳食わぬは男の恥ですよ。彼女達がいいと言っている。俺は・・・」
「女を食うなよ。私が黙って拘束されているのは最後の解決をする為だ。君を化生に落とすのは忍びないからね。いや違うな。私とした事が。女を破滅させる君の体質、その先を知りたいんだ。下世話な恋愛探偵だからね」
「解決?知らない?さっさと俺に
俺は口を紡ぐ。何と言った。俺は彼女達を何だと思った?
ゆるが笑う。あの映像の様に、あのカラオケ店の様に、彼女はいつもの様に、そして手を伸ばす。舞台装置が整ったと言わんばかり。
「さあ、お兄ちゃん。全てを思い出して。この恋愛探偵はよく言ったわ。この色恋沙汰は解決編なの。既に終わった、末の路。お兄ちゃんみたいな人間にはこの顛末こそ相応しい。さあ始めましょう。これから私とお兄ちゃん、南足家を恋愛探偵に語って貰うわ。さあ、教えて、恋愛探偵。いつもみたいに憑物の名を唱えてよ」
ゆるが動けない恋愛探偵の肩に手を置く。酷く蠱惑的な顔を作る妹。相変わらず異性には躊躇しない。昔から妹はそうなのだ。気に入らない女を見るとすぐ様、攻撃的になる。
それに負けず恋愛探偵が叫ぶ。
「ゆる、お前は。淫魔に取り憑かれている。そして、近友!お前は女誑に取り憑かれている。いや、その物だが。だがな、やってやるさ。最後までな!くそ、とんだとばっちりだ!!私は名探偵になりたかった。憑き物落としなんて及びじゃない!!」
そして始まる。最後の一日。
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