九十日目
九十日目
姫ニャンが動けるようになった。
まだ完治とは言えないけれど、太郎丸に乗ることはできそうだ。
今日は様子を見て、明日になったら出発しようかと思う。
目指すは地図の場所。
ケンシは存在しない湖を探していた可能性が高い。
それに私はその場所に朽ちた巨木があることを、サイコメトリーで見ている。
もしかしたら地図には他にもヒントが隠されているのかもしれないけれど、私は英語なんてほとんどわからないし、見つけるのはちょっと無理だろう。
地図には川以外に村と、○と×の二つの印がある。
走り書きだったのか、×の方はかなり形が乱れてる。あとはよくわからない数字なんかが書かれている。
数字は×印の下に書かれていて、普通に考えればこれが座標的なものなんじゃないかとは思う。
ただ、この数字は三行で書かれている上にアルファベットも混じっている。
混じってるのはYだ。
X軸とY軸の記号だと思いたいんだけど、このYは二行目の真ん中に書いてあるんだよね。しかもXは見当たらない。
これも暗号とかになってるのかな。
方角の記号も逆さまにする仕掛けがあったし。でもあのときみたいにヒントになることは見当たらない。
そもそも座標だったとして、それが何を基準に振られたものなのかも問題だ。
この世界の緯度や経度はわからないし、異世界人の作者がそれに倣ったとも思えない。
この地図からはこの世界の人間に読まれたくないような雰囲気をひしひしと感じるし。
うーん、数字か。私の世界のものだと考えると、メートル法かマイルかな。これ書いた人、外国人っぽいし。
一マイルって三、九キロだっけ。いやそれ一里だったかな。
理科の先生が教えてくれたような気がするんだけど、よく覚えてないや。
まあ、この数字がどっちの単位だったとしても、それを正確に計る術はないんだけど。
地図の中でもう一つ気になるのは、○印だ。
川の傍に書かれていて、何かの目印があるんじゃないかとは思う。
それならたぶん、ケンシたちも発見していたはずだよね。
私が知らないってことは、目隠しをされている間のことじゃないかと思う。三日くらい拘束されていたわけだし。
なら、川を下るか上るかすれば見つかるはずだ。
で、問題はやっぱりこの×印のところだ。
二つ目印があって数字が片方にしか振られていないってことは、片方からの距離みたいなものを書かれているんだと思う。
迷路的なゲームならだいたいそんな感じだし。
それでいて、これは異世界人にしか読めないような工夫も仕掛けられているはずなんだ。
それならもうちょっとわかりやすいヒントを残してくれてもいいとは思うんだけどね。
文字も筆記体だし、数字はデジタルみたいなカクカクしたやつだし、日本人からするとものすごく読みにくい。
カクカクの数字の中に筆記体のYがあるもんだから知らない言語か何かかと思ったよ。
……うん? いや、あれ?
もしかしてこれ、Xってちゃんと書いてある……?
あ、私、答えがわかっちゃったかも。
やっぱりこの数字は座標だったんだ。
四桁もかかれてるところと見ると、メートルかな? キロやマイルだったら地図の外までいっちゃいそうだし(これがこの世界の人間に読まれた場合を考え、具体的な数字は伏せておく)。
Xは、一番わかりやすいところに書かれていた。
×印だ。これ、形が乱れていたんじゃなくて、筆記体だったんだ。
数字はそこから列を変えて続けられていた。三段じゃなくて四段に分けて書かれていただけだったんだ。
そんな書き方をした理由は、座標だと悟られにくくするための悪あがきだったんだろうね。
よし。あとは○印の場所を捜し出すだけだ。
異世界生活九十日目。顔も知らぬ異世界人。あなたのメッセージは受け取った。
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