八十四日目(二)
八十四日目(二)
八十三日目。
私たちは馬で運ばれている。
馬の背中にくくり付けられてるみたいで、ろくに身動ぎもできない。姫ニャンもいっしょに乗せられてる。
この感じ、太郎丸かな?
冒険者は他に馬なんて持ってなかったし。
まだ目隠しを取ってもらえないから周囲の状況がほとんどわからない。
たぶん、冒険者は地図の場所を探してるんだろう。
連れ回すんなら目的地を発見してからにしてほしいな。
昨日からずっと荷物みたいに運ばれてるおかげで気分は最悪だよ。
おまけに食事も与えられていない。
水くらい飲ませてくれないと、人間って死ぬんだよ? 私がこの世界に来て最初に体験したのがそれだったんだから、間違いない。
どうにか逃げ出せないかともがいてるのは、姫ニャンも同じだった。
何をしてるのかはわからないけど、しきりに腕を動かしてるのが伝わってくる。
ごめんね。私がもっと賢くて慎重だったら、こんなことにはならなかったかもしれない。
逃げられるのなら姫ニャンだけでも逃げて。
姫ニャンの方が後ろに乗せられてることになるのかな。
冒険者の位置がわからないけど、私はできるだけ自分の体で姫ニャンを隠せるようにもがいてみたよ。
まあ前後に挟んで移動してる可能性も高いから、あまり意味はないかもしれないけれど。
冒険者は徹底してる……というより、こっちを人間とも思っていないんだろうね。
昨日の夜は馬から下ろしてすらもらえなかった。
拘束されて今日で二日目。
ろくに身動き取れないとはいえ、荷物みたいに積まれて運ばれてるんだ。体力の消耗も激しい。
どうにかして水を飲みたい。
運ばれている間に気を失っていたらしい。
いつの間にか馬の足は止まっていた。
周囲は夜らしい。目隠しはされたままだけど布越しでもそれくらいわかる。
あと日射しも感じなくなっていたし。
それと、水の音が聞こえた。
流れてる感じがするから川かな。地図の目印の一つを見つけたらしい。
息がしづらい。
姫ニャンも気を失ってるのか身動きしない。
さすがに冒険者も死にそうだと気付いたんだろう。
少しだけ水を飲ませてくれて、そのときだけ目隠しを外してくれた。旅の間の水は貴重だからこぼしたくなかったんだろう。
隣を見て、カッと頭が熱くなるのがわかった。
姫ニャンの顔には大きな青あざができていた。
きっと、捕まったときに抵抗したんだ。私が先にやられちゃったから、助けようとしてくれたんだ。
こいつら、絶対許さない。
私たちが乗せられてたのは、やっぱり太郎丸の背中だった。
M-1は取り上げられてるけど、荷物はほとんど積まれたままだ。
荷物の中には鉈も入ってる。拘束さえ解ければ、逃げられるかもしれない。
問題は、どうやって拘束を解くかだ。
異世界生活八十三日目。諦めるもんか。
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