八十四日目(一)


八十四日目(一)


 いきなり日付が空いてしまって困惑させただろうか。


 この三日間に起きたことついて記す。


 あまり時間がないため、乱雑な記述になるとは思うが付き合ってほしい。





 八十二日目。


 気が付いたときには、私と姫ニャンは拘束されていた。


 寝込みを襲われて、抵抗する暇もなかった。


 頭から布をかぶせられ、誰に捕まったのかもわからなかったよ。

 まあ、すぐに見当はついたけれど。


 言葉はわからなくても、声は覚えられるんだ。


 私たちを拘束したのはやはりというか、あの冒険者二人組みだった。


 こいつら、私たちを逃がすつもりなんてなかったんだ。


 一度解放してみせたのは油断させるためだったみたいだね。

 実際、私たちはまんまと緊張の糸が切れてぐっすり眠ってしまったわけだし。


 M-1はもちろん、ナイフ類も取り上げられてしまったみたいだ。

 テントとか他の装備はどうなったかわからない。

 あと太郎丸も。無事だといいけど。


 唯一安心できたのは、姫ニャンも傍にいたことかな。

 目隠しをされているから本当に無事かはわからないけど、声は聞こえる。


 冒険者は狡猾だったけれど、あまり頭はよくないのかもしれない。


 お前、言葉わからないのに目隠し拘束までして、どうやって情報聞き出すつもりだよ。

 なんかがなり立ててるけど何言ってるかわかんないってば。


 あとが喚いてるのはもっぱらケンシの方みたいだった。

 目隠しされていても罵倒されてるんだろうってことはなんとなくわかる。


 昨日までは寡黙な感じに思えたけど、これが素なんだろうな。

 ほとんどしゃべらなかったけどそこはかとなく陽キャのオーラ出てたし。

 口が軽いからしゃべるなってガクシャに言われて黙ってたってところじゃないかな。


 とにかく逃げ出さなきゃとは思うけど、手足がっちり縛られてて芋虫の真似しかできない。


 やっぱりこの世界の冒険者と関わっちゃダメだったんだ。

 こいつら野盗と変わんないよ。


 こんなことなら出会ったときに撃ち殺しておけばよかった。

 姫ニャンに怪我させたらお前ら絶対許さないからな。


 異世界生活八十二日目。復讐を決心するも、今は抵抗の術もなかった。


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