七十八日目
七十八日目
どうしよう。冒険者二人といっしょに行動することになってしまった。
話し込んで……というかコミュ取ってるうちに陽が暮れてしまって、その日はいっしょに野営することになった。
まあ出会ったばかりの冒険者を信用するわけにはいかないからね。テントは少し離れた位置に設置させてもらったけれど。
ただ、彼女たちは遺物を集めていても、使い方まで理解しているわけではないのかもしれない。
特に乾電池とか銃に込めようとしてもできないみたいなジェスチャーを取ってた。
そこでうっかりM-1の整備をしてるのを見られて、そのまま強引についてこられてしまった。
もうすぐ街道を外れる場所なのに、これじゃあオークさんの集落に向かえないじゃないか。
そんなわけで、今は冒険者たちといっしょに街道を北上しているよ。
東に外れるべきポイントはたぶんもう通り過ぎた。
姫ニャンも心配そうな顔をしてるけれど、今は仕方がない。
適当なところで別れたいところなんだけど、下手に逃げて追跡されても困る。
太郎丸にまたがれるくらいには〝あれ〟も落ち着いたし、隙を見て逃げたいところだけどね。
厄介なことになってしまったけれど、その分情報をいただかせてもらうことにしよう。
冒険者の二人は他の冒険者ほど話が通じないわけじゃなさそうだ。
まあ情報源相手だから下手に出てるだけだとは思うけれど、少なくとも今のところ襲われそうな気配はない。
あと女同士だから、というのもなくはないのかもしれない。
まあJCのころも私はクラスの女子からハブられてたから知らんけど、なんか女子同士の連帯感(?)みたいなのってあったし。うちの学校だけか?
ひとまず収穫といえば、ライターのオイルを補充してもらえたことかな。
冒険者が持ってた遺物の中に四角い缶があって、ライターと同じメーカー名が印刷されてたんだ。
使わせてもらったらちゃんと火が付くようになった。
たき火はナイフ片でも熾せるようになったけど、ライターは暗いところで灯りにもなるからね。活躍の場は多いだろう。
他に冒険者の持ち物で気になったのは弾薬かな。
たぶんあれM-1とも規格が合うとは思うんだけど、それ以上に同じ持ち主のものかもしれないからサイコメトリーで情報を抜きたい。
ちなみにM-1の整備を始めたのは弾薬の形を確かめたかったからでもある。
……それを促すためにあんなジェスチャーを取ったと考えるのは、疑りすぎだろうか?
とはいえ馬の足はやはり速い。陽が暮れる前には次の村に到着しそうだ。
どうしようかな。
もし宿を取れれば夜中にこっそり逃げ出すことはできると思うけれど、蹄の跡とかって追跡できるものかな。
オークさんの集落を襲った冒険者たちは追跡してきたわけだし、草むらを走ったからといって逃げられる保証はないんだよね。
やっぱり下手に探されると、いずれオークさんたちの集落にもたどり着かれてしまうかもしれない。
となると、ここはおとなしく同行して穏便に別れる方がいいかな。
ただM-1だけはいつでも撃てるように運び方を変えよう。
太郎丸の鞍に差せそうだったから、ここならいいかな。足下だからすぐ引っ張り出せるし。
異世界生活七十八日目。村に宿はなかったよ。
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