七十六日目
七十六日目
やはり街道を歩いていると人間に遭遇する危険は避けられない。
昨日に引き続き街道を歩いて進んでいると、何度か人間とすれ違ったよ。
商人さんと冒険者がひと組ずつ。冒険者は商人さんのあとからやってきたし、別に護衛ってわけではなさそうだった。
冒険者たち、オークさんたちを探してるわけじゃないといいけど、大丈夫かな。
地図を確かめてみると、街道の先にあるのは小さな村みたいだ。
商人が行き来してるってことは、何か特産品でもあるのかな。思えば最初に出会った商人さんも馬車の片方は山ほど箱を積み込んでいた気がするし。
その先は地図も未完成な未開の地になっている。
元の世界に戻る方法を探すなら、そっち方面に行ってみるのもいいかもしれないね。
幸いというか、フードをしっかりかぶってたおかげか、人間たちは私たちには関心を示さず通り過ぎていったよ。
ただ、思ったより人の通りがあるのはわかった。
街道から外れるときは見られないように気をつけないとね。私たちはそのまま姿を消すことになるんだから、変に捜索とかされても困る。
ないとは思うけど、そういう可能性を残すわけにはいかないからね。
それにしても歩くとなると、この辺りは景色の変化もなくて暇だな。
まあ姫ニャンがいっしょだし、なんなら手も繋いでくれてるから退屈なわけじゃないんだけど、それはそれでどこ見て歩いたらいいのかわからないというか。
太郎丸に乗っていれば速いというのもあるけど、私の操縦技術なんてサイコメトリー由来の付け焼き刃だからね。
結構振り落とされないように必死だったりするんだ。だから乗ってる時間というのは余計にあっという間だ。
〝あれ〟も歩く分には問題ないし、もう少し先を急いでもいいかもしれない。
明日にはたぶん、太郎丸に乗っても大丈夫なくらいに収まってるだろうし。
そうして先に進んでると、何やら地面が荒れているところに遭遇した。
あちこち掘り返したみたいな穴が空いていて、馬車とかも車輪を取られたんだろうね。何か引きずったみたいな跡がいっぱいある。
だからどうしたってわけじゃないんだけど、なんだか気になって観察していて気付いた。
ここ、もしかしたら魔法使いに襲われた場所かもしれない。
さすがに死体とかは残ってないけど、地面の凹みとかよく見たら焦げたような跡がある。
あのときと同じ街道を通っているはずだし、距離的にもこの辺りなんじゃないかと思う。
あの魔法使い、結局なんだったんだろう。
通り魔……なんだろうとは思うけれど、こんな辺境で通行人襲って何がしたかったんだろう。
それに、なんでM-1なんて私の世界の遺物なんて持ってたんだろう。
よく考えると、いろいろ謎が多すぎる。
魔法使いについて調べたいところではあるんだけど、果たして言葉も文字もわからないのにどうやって調べたものか。
ジェスチャーとか絵じゃ意思の疎通が関の山だものね。
気になることは山ほどあるけど、早くオークニキに会いたいな。
異世界生活七十六日目。歩いているとつい考えごとばかりしちゃう。
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