六十三日目
六十三日目
どうにもこの世界、白髪というか若白髪は忌み嫌われてるらしい。
今朝になったら姫ニャンも落ち着いたみたいだ。
朝ご飯はいつも通りお魚を獲ってきて、そろそろ出発の準備をしようかとしたとことで、姫ニャンが教えてくれた。
教えるといってもジェスチャーだからたまに意味を取り違えたりするけど、ほぼほぼ間違いないと思う。
こんな感じだった。
姫ニャンは自分の髪と尻尾の色、そして私の髪に触ってバッテンを作る。
それからマントのフードで頭を隠して、顔を見せちゃダメみたいな仕草をしてみせた。
それで私もフードをかぶって返したら頷いた。
白髪は人に見られるとマズいってことなんだろう。
そういえばアルビノ体質の人とかが迫害された歴史って、元の世界でも世界中に残ってるからね。この世界が違う理由もない。
まあ逆に神聖なものみたいに扱われたケースもあるみたいだけどね。
日本の因幡の白ウサギとか。
姫ニャンが頑なにフードをかぶせようとしてきたときに気付くべきだった。
なんていうか、そりゃ私もそれなりに髪長いから視界に入らないわけじゃないんだけど、鏡持ってないし自分の顔見る機会少ないから、今いち自分が白髪だっていう自覚というか認識が甘かったんだよね。
そう考えると、今までのこともいろいろ合点がいった。
冒険者が出会い頭にいきなり襲いかかってきたのも『呪われた白髪+ゾンビみたいな顔色+聞いたこともない言葉+見たこともない服装』という数え役満な女が近づいてきたから、と考えれば説明はつく。
もちろん納得はいかないけど、実際自分が逆の立場だったらダッシュで逃げるくらいはするだろう。
まあいきなり襲いかかったりはしないけどね。
姫ニャンも白猫だから、きっと迫害されて草原で独りぼっちだったんだ。
私といっしょに来てくれたのも、助けたことがあるからというより、同じ境遇だったからなんだね。
今にして思えば、オークニキが私を助けてくれたのもそれが理由だったのかもしれない。
その『いかにも迫害されてそうな娘』が死にかけて倒れてたわけだもの。
オークさんたち、根は優しいから同情してくれたんだろう。
あとオークさんたちは根本的に体毛が薄いから、その〝白髪迫害〟みたいな観念が薄かったんじゃないかな。
そういう観念が強かったら、子供オークくんとか絶対近づけさせないだろうし。
なるほどね。どうりでこの世界、私に厳しいと思ったよ。
じゃあやっぱり魔法使いのときも逃げて正解だったね。
下手をすれば魔法使いよりもひどい目に遭わされてたかもしれない。
いやでも待てよ。
いくら抵抗できそうにないからって、そんな『呪われてそうな女』見て押し倒そうと思うものなのかね。
あまり死人の悪口は言いたくないけど、最初に出会った冒険者は今考えてもいろいろとおかしかったと思う。
うーん、しかし白髪ダメな世界だったか。
思えば私、どのタイミングで総白髪になっちゃったんだろうね。
三日目に水面見て初めて気付いたんだよね。
あとこれ、仮に元の世界に戻れたとして、髪の色も元に戻るのかな。
いやなんか無理そうな気がするよ。
それに姫ニャンを独り置いていくわけにはいかなくなった。
戻るんならどうにか姫ニャンもいっしょに連れていけないかな。
リアル猫耳少女とか大変な騒ぎになりそうだけど、でもこの世界にいるよりはずっと良いと思う。
まあ先のことは追々考えるとして、このタイミングで教えてくれたのは正直助かったよ。
何も知らずに人間の町に行ったらオークさんの偽情報を流す以前に、話なんて聞いてもらえなかっただろうからね。
町に行ったらじゃ絶対フードを外しちゃダメだ。
異世界生活六十三日目。この世界から嫌われてる理由を知った。
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