五十七日目
五十七日目
この世界、私はまともに人間と交流したらいけない決まりでもあるのかい?
昨日、商人さんが死んでるのを見た私と姫ニャンはダッシュで逃げた。
悪いとは思うけれど、まだ殺した犯人が近くにいるかもしれないし、そうでなくても私たちが犯人扱いされる可能性もある。
何よりトラブルになった場合、太郎丸を失う危険が大きすぎる。
とにかくその場に留まるのはいろんな意味で危険だと思ったんだ。
あと、今回は吐かなかったよ。えらいでしょう。
反射的に手綱を取ったのは来た方向だったよ。
まあ、進むと危険かもしれないから引き返したってことになるかな。
昨晩はそのまますぐ逃げられるようにテントも広げず、姫ニャンと震えながら過ごした。
翌朝。迂回していくことも考えたけど、もう一度様子を確かめにいくことにした。
馬車はすぐに見つかったよ。
ひとまず昨日と様子は変わってないように見えた。
殺されてたのは、やっぱり私にマントを売ってくれた商人さんだった。
積み荷を荒らされていたことから物盗り――この世界だと野盗とかか――に襲われたんだろうとは思うんだけど、商人さんの死に方は刃物で斬られたとかじゃなさそうだった。
なんだろう。
火傷? みたいな感じではあるんだけど、別に服とかが燃えた様子はなかったし、ちょっとわからない。
この世界、やっぱり魔法とかあるんだろうか。
だとしたらなおのこと、襲われたら私じゃどうしようもない。困ったね。
ただ、死んでたのは一人だけで、馬車も一台だった。
マントを買ったときは馬車は二台あったし、商人さんも見えた範囲だけで五人はいた。
逃げられた人もいるのかな?
いやでもこの世界に奴隷制度とかあるんなら、連れ去られたってこともあるのかもしれない。
……やっぱりこのまま進むのは危ない気がするな。
幸いというか、辺りは草原だから見晴らしはいい。誰か近づいてきたらすぐにわかるだろう。
……いやでもでも草の背丈が高いから、逆に伏せて潜んでたりするとわからないかな。
なんにせよ、この辺りは水場が少ないから早い目に通り抜けたいところだ。
水場がないってことはトイレとかも困るってことなんだよ。食料面でも困ったことになるけども。
商人さんを弔ってあげたいところではあったけれど、ごめんね。そのまま行くよ。
せめてものはなむけに顔に手を組ませて目を閉じさせてあげた。
かぶせてあげられるものもあればよかったんだけど、手ごろなものは見つからなかった。
でもあれ? 死後硬直ってあるよね。
ちょっと細かい時間とか覚えてないけれど、死体は死後十二時間くらいで一度関節とか硬直するけど、そのあと次第に元に戻るって聞いた覚えがある。
私が見つけてから一日以上経ってるけど、手を組ませたりはできた。あと、気温は結構暖かくなってきている。
ええっと、つまり殺されてから結構時間が経ってることになるのかな? たぶん、私たちと別れたあとすぐに襲われたくらい……になるのか。
だからどうしたってわけじゃないけれど、拾えた情報はできるだけ記しておくよ。
でもまあ、それだけ時間が経ってるなら犯人はもうこの近くにはいないんじゃないかとも思う。
とにかく街道を見失わない程度に離れて、草原を進んでいくことにしたよ。
また進行速度が落ちることになるけど、安全には変えられない。
異世界生活五十七日目。この世界は危険がいっぱい。
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