四十二日目
四十二日目
集落は火を放たれたみたいだ。
家はほとんど焼け落ちて残っていなかった。
私が寝てた小屋やベッドも、もうどこにあったかわからないや。
ただ、オークさんたちの遺体はなかった。冒険者の死体もない。
戦いがあったのは間違いなさそうなのに、どういうことなんだろう。
冒険者が運んだというのはちょっと考えにくい。
避難した私たちにもすぐに追いついてきたし、オークさんたちの遺体を動かしてる時間なんてなかったはずだ。
そもそも持っていってどうするんだって話だし。
じゃあ、生き残ったオークさんの誰かが戻ってきた?
そう考えるのが自然な気がするけれど、確証を得られるものは何もない。
どうしよう。ここに帰ってくれば何かわかるかと思ったんだけれど、何も残っていない。
冒険者に襲撃されてから二週間も経ってるし、さすがに遅すぎたのかもしれない。
集落跡をウロウロしていて、変に地面が剥げているところを発見した。
他のところは灰が積もっていたり焦げていたりするのに、そこだけ掘り返したみたいになっている。
辺りを見渡してみると、途切れ途切れになっているけれど集落の外に続いているようだった。
もしかして、これって何かを引きずった跡かな?
私はその跡を追いかけてみた。
引きずった跡は集落のあちこちから延びていたけれど、向かう先はひとつだった。何を引きずったのかは、見当がついているつもりだ。
集落の外に出て畑を抜けると、その先に見覚えのないものができていた。
こんもりと盛り上げられた土の山。その上に、何か文字が刻まれた小さな岩が置かれている。
そんな土の山がいくつも規則正しく並んでいて、どうやら私の予感は当たっていたらしいとわかった。
そこに並んでいたのは、お墓だった。
掘り起こしたわけではないけれど、山の大きさからオークさんたちが埋葬されているんだとわかる。
ここで戦ったみんなだ。
人間の私に優しくしてくれたオークさんたちだ。
なんでみんなが死ななきゃいけなかったのか、そう考えたらぐちゃぐちゃの感情がこみ上げてきて、私はしばらくひどい声を上げて泣いてたと思う。
私、最近泣いてばかりだね。
でも、ひとしきり泣いてから気付いた。
このお墓、誰が作ったのかって。
お墓はまだ湿った土の色をしていて、どれも新しいものみたいだった。
具体的にどれくらい前のものかはわからないけれど、作られてから一週間も経ってはいないと思う。
誰か生き残りのオークさんがいたんだ。冒険者がこんなことしてくれるわけないし。
そうわかったらなんだかホッとして、また涙が出てきた。
ひとりでもいい。生きていてくれたのなら、私は嬉しい。
これからやることが決まった。
生き残りのオークさんを探して、合流する。
異世界生活四十二日目。オークさんたちに会いたいな。
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