四十三日目
四十三日目
集落に使えそうな家は残っていなかった。
夜は姫ニャンと合流して(ちゃんと集落の外で待っててくれた)いっしょに野宿した。
この辺りは荒野ばかりだけれど、集落には小さい湖があるからお魚を捕れるのがありがたい。
まあ、森の方にいた魚の方が太ってて美味しかったけど、いつぞやの木の実に比べれば食料があるだけでも感謝すべきだね。
そうして今日は朝から生き残りのオークさんを探しに行こうと思ったのだけれど、何やら姫ニャンが手を引っ張る。
どうやら連れていきたい場所……というより見せたいものかな?
何かがあるみたいだ。
姫ニャンが向かったのは集落から少し離れた岩場みたいなところだった。
雑草が少し生えてるくらいで、他はゴツゴツした岩しかない。
こういう地形って、どうやってできるのかな?
近くに山とかもないし、地震とかで地面が隆起して出てくるんだろうか。それとも極端に土が少ないから岩だらけになるのかな。
ちゃんと学校行っていたら授業で習ったんだろうか。ちょっと気になる。
それはさておき、岩場縫うようにして進む姫ニャンについていくと、そこでちょっと予期せぬものに遭遇した。
馬だ。
野生の馬じゃない。手綱も付いてるし荷物も背負ってる。
手綱が岩のひとつに括り付けられていて、ここで待たされているんだとわかった。
どうにも昨日、別行動を取っている間に見つけたらしい。
これって、誰が乗ってきた馬なんだろう?
冒険者……にしては、数が少ない。あいつら三人はいたのに、ここに残っているのは一頭だけだもの。
ただ、周囲の草を食べ尽くしてしまったみたいで、どうやらお腹を空かしているみたいだった。
私は辺りに生えている雑草を抜いて食べさせてあげることにした。
馬のご飯って雑草でいいのか不安だったけれど、ちゃんと食べてくれたよ。
途中から姫ニャンも雑草集めを手伝ってくれたから、結構たくさん用意してあげられた。
ご飯を食べてる間は暴れたりしないだろう。
私は少し荷物を調べさせてもらった。
たぶんだけれど、この馬はあの冒険者たちのものなんだと思う。
食料とか寝袋みたいなものがいくつも括り付けられていた。結構な量が積まれていて、人が乗れるスペースはほとんどないように見える。
もしかして、この馬さんは荷物の運搬用とかだったりするのかな?
オークさんたちを追いかけるのには別の馬を使って、この馬さんは荷物といっしょにここで待機させられていた、とか。
森の中で他の馬には遭遇しなかったけれど、そう考えれば辻褄は合うかな?
冒険者の残したものなら、サイコメトリーを使えば色々情報を拾えそうだ。
ただ私が最初に試したのは〝馬に乗る〟ということだった。
手綱を握れば予想通りサイコメトリーが発動してくれた。
やはり乗っていたのは冒険者みたいだ。
このときはひとりだったみたいで、たくさんの荷物を括り付けてから鞍にまたがるところだった。
周囲には背の高い木組みの家が並んで見えたから、人間の町なんだろう。
一度ふり返ると何頭も馬が並んだ厩舎が見えたから、この馬さんを買うかなんかで手に入れたところなんだろうと思った。
この持ち主があの冒険者だと考えると略奪でもしてるようであまりよい気分ではないけれど、無事に馬さんにまたがることができた。
そのまま見様見真似でそっと馬さんのお腹を蹴ってみると、ちゃんと歩いてくれたよ。
よし、この馬さんは〝太郎丸〟と名付けよう。偉大なワンコの名前だよ。
君の持ち主はもう帰ってこない。
納得はいかないかもしれないけれど、ここで野垂れ死ぬよりはマシだと思う。いっしょに来てもらうよ。
異世界生活四十三日目。このあと落馬した。
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