三十七日目
三十七日目
羊皮紙はやっぱり依頼書のようだったよ。
〝読む〟という行為がそのままトリガーになったので、昨晩のうちに試すことができた。
ただ、もうひとつのペンダントに関しては進展はない。
ペンダントを〝使う〟ってどういう行為なんだい?
一応、首に提げてみたり色々試してみたけれど、サイコメトリーのトリガーにはならなかった。こっちはしばらく保留だね。
で、進展があった羊皮紙だけれど、冒険者たちが集まるギルドだか酒場だかみたいな場所で、同じような羊皮紙がいっぱい壁に貼り出されていた。
文字は読めないけれど、大きめに書かれている記号がどれも似たような形で、これが数字、つまり報酬の金額とかなんじゃないかと思うんだ。
記憶は短い時間しか見えないけれど、昨晩と今日で二度同じものを見ることができた。
それで気付いたのだけれど、この依頼書というのは同じものは貼られていないようだった。
重ねて貼られている様子もない。
で、冒険者たちは気に入った依頼書を剥がして、受け付けみたいなところに持っていっていた。
何が言いたいのかというと、この冒険者たちが依頼を受けている間は他の冒険者が同じ依頼を受けてくることはないってことじゃないかな?
たぶん、獲物の奪い合いみたいなトラブルを減らすために、そうしているんじゃないかと思う。
それはつまり、しばらく次の冒険者が来ることはないということでもあるけれど、集落から避難することになって十日以上経っている。
この冒険者たちが戻らなかったら、また同じ依頼が出されることになるんじゃないかな。
どうしよう。なんとかしないと、逃げ延びたオークさんたちがまた襲われてしまう。
でも、どうしたらいいんだろう。
とにかく、オークさんたちに危険を知らせないと。
オークさんたちの避難先は、私にはわからない。
足跡も残っていないから追いかけるのも難しい。
となると、最初の集落に戻るしかない。
こっちも森の中を通ってきたから戻れるか怪しいけれども。
荷物をまとめて出発しようとして、冒険者の亡骸がどうしても視界に入ってきてしまった。
オークさんたちを殺したやつだし、私自身も襲われた。
でも、最終的に殺したのは私だ。
このまま野晒しっていうのは、さすがにあんまりかな……。
私は冒険者の亡骸を埋めてやることにした。
スコップの代わりに手斧を使った。
さすがにボロボロになっちゃったけど、代わりに血の跡とかも土といっしょに取れたよ。
いつか研石を見つけたら研ぎ直してみようかな。研ぎ方とか知らないけど。
最後に、冒険者の剣は墓標として置いて行くことにした。
他の荷物は、悪けれどもらっていくよ。
異世界生活三十七日目。誰かがこの冒険者のお墓を見つけてくれますように。
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