三十六日目
三十六日目
今日は冒険者の死体を調べにいく。
体調は、万全とは言えないけれど動けるようにはなった。
足の怪我はだいぶよくなったし、山道を歩いても耐えられると思う。
正直、まだ水場を離れるのはキツくはあるんだけれど、いつまでもこうしてはいられない。
姫ニャンは心配そうな顔をしていたけれど、いっしょに来てくれたよ。
とはいえ、ここは道もない森の中だ。
元の場所に戻れるかは怪しいところだったのだけれど、目印を見つけることができた。
来たときの血の跡が、点々と残っていたんだ。
いやまあ、確かに血痕を残しちゃったのはわかってたけど、四日も前の話だよ。
まさか未だに残っているとは思わなかった。
そんな血痕に群がるように、たくさんの獣の足跡が残っていることに気付いたときは、さすがに青ざめた。
初日にたいまつパンチをかましておいてよかった。
あれがなかったら、眠っている間にムシャムシャされていたかもしれない。
ともあれ、血痕を辿っていくと冒険者の死体のところまで戻ることができた。
戻ってくるべきじゃなかったと、すぐに後悔した。
死体はめちゃくちゃに食い荒らされていた。
血の臭いに群がってくる獣がいるんだ。
私たちを食べ損ねた獣たちは、同じ血の臭いを辿ってこちらに来てしまったらしい。
私は同じ場所でまた嘔吐した。
最低のやつだったけれど、さすがに死んだあとまでこんな目に遭わなきゃいけないやつでもなかった。
私がかけたローブもどこかにいってしまっている。
ああ……。じゃあ、オークさんたちの遺体も同じようなことになってしまったのかな。
戻って埋葬してあげたいけれど、もう一度あの場所に戻れる自信はないし、戻れたところで私と姫ニャンの力じゃオークさんたちの巨体を動かすこともできないだろう。
私にできそうなことと言えばどうにか生き残りのオークさんたちを捜して、あの場所を教えるくらいか。
吐き出すものもなくなったころ、私は死体を調べ始めた。
と言っても死体は直視できなかったから、周囲にばらまかれていた荷物を調べてみただけだけれど。
発見できたのは以下のものだ。
・ナイフ。
・縫い針。
・剣。
・銀貨と銅貨の入った袋。
・何かの文字を刻んだペンダント?
・丈夫そうな羊皮紙。
きっと食料なんかも持ってたんだと思うんだけれど、獣にやられたみたいで残っていなかった。
あと手斧も一応回収できた。
血まみれだし肉片なんかも付いてたからもう触りたくないんだけれど、今のところ私が満足に使える武器ってこれしかないし。
特に気になったのはペンダントと羊皮紙だ。
ペンダントの方は飾り気もなく単語がひとつ刻まれてるだけ。
魔法のアイテムとかかと思ったけれど、ネームタグみたいなものなんじゃないかな。
さすがにこの最期には同情するし、これは他の人間に届けてあげるくらいしてもいいかもしれない。
羊皮紙の方はチープな怪物の絵(たぶんオークさん)が真ん中に描かれていて、その下に十行くらいの文字が並んでいた。
これ、もしかして手配書とか依頼書みたいなものなんじゃないかな?
中々重要なものを手に入れたのかもしれない。
異世界生活三十六日目。晩ご飯はさすがに喉を通らなかったよ。
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