二十四日目
二十四日目
最近釣り竿作りに没頭して忘れていたけれど、サイコメトリーの検証ができていない。
何度か使っているけれど、ナイフ片からサイコメトリーが発動することはなかった。
一度見たものからは見れないのかな。
他に人間の遺留品を見つけたら試してみたいところだけれど、今のところそれらしいものは見当たらない。
もしこれを読んでいる君が同じような境遇にあるのなら、つたないけれど私の試行錯誤が少しでも役に立てることを祈っているよ。
それはともかくとして、今日の活動は再び釣り竿作りだ。
竿(木の枝)はいつでも見つかるから、まずは釣り針をたくさん作ることにした。
こんなことばかりしているせいで指先はあかぎれでボロボロだし、爪も割れて肌をかいたら怪我するようになってしまったよ。
でも、手に力が入らなくなったり動かなくなったりするようなことはない。
少しはニートの貧弱な体もこの世界に適応し始めたのかな?
夕方までに釣り針は五本も作ることができたよ。昨日は一本しか作れなかったことを考えると、結構な進歩じゃないだろうか。
そんな作業を子供オークくんがおもしろそうに見てきていた。
陽が暮れる前に糸も作っておきたくてまた少し髪を引っこ抜いたのだけれど、それを見た子供オークくんがずいぶんびっくりした顔をしていた。
そういえばオークさんたちってあまり毛深くないというか、体毛とか少ないね。
まったくないわけじゃないんだけれど、せいぜい産毛くらいの薄いものだ。
代わりに皮膚が硬くて強いイメージだよ。
なんというかハ虫類……ではないな、動物のサイみたいな感じかな。
サイなんて触ったことないけれど、見た目の印象はサイとかカバが近いような気がする。
やっぱり服とか着ていると体毛って退化するものなのかな。
まあ、体毛なんてなくてもオークさんの皮膚はナイフくらいじゃ傷つけられそうにないんだけれど。
なんにせよ、子供オークくんからしたら自傷行為みたいに見えたのかもしれない。
とっさに髪の毛で輪っかを作ったりして遊んでみせたら、安心してくれたようだった。
で、ここでサイコメトリーの話に戻る。
せっかく枝切れがいっぱいあるんだから、ナイフ片で何か工作でもできないかと思ったんだ。
まあ、私はお世辞にも器用な人間ではないから竹とんぼみたいなものは作れなかったけどね。
そうしてナイフ片で枝を削ろうとしたら、また知らない記憶が見えたんだ。
今回見えたのは木の杭みたいなものを作ってる光景だった。
矢にしては太かったから、罠とかに使うものかな? ジャングルとかのトラップに使いそうな太さのものだったよ。
どうやら一度見たものからでも、別の記憶を見ることができるみたいだ。
あまり役に立つ記憶ではなかったけれど、削り方のコツみたいなものは掴めたような気がする。
おかげで不細工だけれど猫の人形(?)を作ってあげることができたよ。子供オークくんが猫とわかってくれたかは定かじゃないけれども。
それと、やっぱり今回も見えたのは一度限りでそのあとはどう意識しても見ることができなかった。
ただ、まだ確証はないけれど、発動の条件に使い方を意識するというか、目的を持って使おうとする行為みたいなのが必要なんじゃないかと思った。
手斧のときも火付け石のときも、私の中に〝使ってみる〟という意思があったから。
異世界生活二十四日目。釣り竿二号も魚に盗られた。
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