十八日目
十八日目
チート能力(らしきもの)あったー!
昨日の今日で申し訳ないが、私にも隠された能力(?)のようなものがある可能性があるのかもしれない。
ものすごく曖昧なものいいで申し訳ないが、なにぶん再現性がなくてまだ勘違いと言えなくもない段階なんだ。
順を追って説明しよう。
昨日に続いて今日もオークニキは私に稽古を付けようとしてくれた。
と言っても剣が絶望的なのも、私の手がマメ潰れて悲惨なことになってるのもわかっているのだろう。
今日は斧を持ってきた。オークさんたちの手には合わないだろう、ずいぶん小ぶりの斧だった。
手斧というのかな?
見覚えがある。私がこの世界に来て始めのころに、冒険者から投げつけられたものだ。木にぶっ刺さっていたように思うけれど、あのまま放置していったんだろうか。
まあ、私のクソザコ身体能力では一から剣を覚えるより、ものの投げ方を学んだ方がいくらかマシなのは確かだろう。
オークニキは丸太を立てて的を作ってくれた。
どうやらオークさんたちはものを投げるのが苦手なようで、オークニキも子供オークくんも的には当てられなかった。
そもそも小さすぎて手に合わないんだから仕方ないだろうけれど、投げろという意思は伝わった。
そして手斧を受け取り、投げようと振りかぶったときに、それは起こった。
説明するのが難しいのだけれど、頭の中に知らない人の記憶が流れてきたような感覚だった。
サイコメトリーのようなものだろうか。
これを読んでいる君がいつの誰なのかわからないから補足しておくけれど、物にも記憶が宿るという考え方があって、それを読み取るような能力のことだ。
見えたのは手斧を投げる誰かのもので、一瞬しか見えなかった。でも自然と体がその記憶通りに動いて、手斧は見事に的に当たったんだ。
これにはオークニキもにっこり笑って拍手してくれた。
私もテンション上がったんだけれど、そこからが問題だった。
見えたのは一度こっきり。
次に投げたときは何も起きなかったし、的にも当たらなかった。それにどうして今まで何も見えなかったのに、今回だけ見えたんだろう?
再現性もないんじゃ検証もできないし、そもそも気のせいだったのかもしれないしで、すぐにあれは本当のことだったのか自信がなくなってきた。
ただ、昔のお侍さんの言葉で『斬り覚える』というのがあるらしい。読んで字のごとく、斬れば斬った分だけ体が覚えて強くなるみたいな意味だ。
一度はちゃんと投げられたんだ。
その感覚を思い出すようにして投げるうちに、的にも当たるようになった。陽が暮れるころには、三回に二回は当たるようになっていたよ。
だからたぶん、あの記憶自体は本物だと思うんだ。
ただ、どうして見えたのか。どうすれば見えるのか。そもそもどうして今まで見えなかったのか。その辺りが全然わからなかった。
これは時間をかけて探っていくしかないのかな。
あとあれ、投げるときは思いっきり声を上げた方が力が入ってよく当たった気がする。
一番しっくり来たのは『ゲッ○ートマホーク』だったよ。
異世界生活十八日目。トマホーク楽しい。
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