十四日目


十四日目


 オークさんたちから生活を学ぶ。


 今日も洗濯物を手伝っていたら、石けんを作ってるタルを見つけた!


 興味あったので覗いてたら、オークママが作るところを見せてくれた。造り方を覚えておきたいからここに記しておく。


 まずタルの三分の二くらいまであったかい油(だと思う)が入ってた。

 石けんの主成分って油だったのかい? そこに灰を混ぜた水をいっぱいまで入れる。灰は水の四分の一くらいに見えた。あとは棒でひたすらグルグル混ぜる。

 まとめると石けんの材料は油が二。灰を入れた水が一(水:灰=4:1)の比率でとにかく混ぜる、だよ。

 油は固まらなければいい程度の温度だった。


 こうやって書くと簡単そうだけど、実際は結構な重労働だったよ。

 まあ、量が多かったせいもあるだろうけれど、あれひとりで作ることになったらできるかな? 分量も目分量だから正確じゃあないし。


 油にも種類があるんだとは思うけれど、どうやらオークさんたちは動物の脂を使っているようだった。

 というのも毎晩たき火をやっているわけだけれど、そこで出た油をタルに溜めていたようだった。


 灰はもちろんたき火の灰だし、あのたき火は実は調理以外にもいろんな役に立ってたんだね。

 なんか異世界だからって深く考えていなかったよ。


 そうそう。その石けんを少しわけてもらえたから、メガネが復活したよ!

 石けん水を作って水洗いしたんだけど、久しぶりに視界がクリアになった。まあ、元々割れてるからある程度ではあるけれど、格段にものが見えるようになった。




 石けん作りを見学させてもらっても、洗濯はお昼までには終わる。


 お昼からは別のことを探してみることにした。


 ただ食事は刃物を使うせいか手伝わせてもらえなかったよ。

 遠くから見てなさい、みたいな感じだった。もしかしたらご飯をがっついてるみたいに思われたのかもしれないけれど。


 ああ、ちなみにオークさんたちは獣を捌くのめちゃくちゃ上手かったよ。

 調理用の鉈みたいなのがちゃんとあって、鹿っぽい生き物の首をぽんと外してお腹かっさばいて……って思い出したら気分が。


 いや肉食べてるのに残酷とか言うつもりはないけど、あれ実際に目の当たりにすると色々と無理だった。

 内臓とかぼとぼと出てくるし血抜きもするしで、視覚的にも嗅覚的にもニートには耐えられなかった。


 あ、でも最初のころに食べさせてもらった肉は鹿っぽくなかった気がする。

 まあ鹿の肉自体食べたことないんだけど、鹿って硬そうというか牛肉や豚肉寄りの気がするんだ。

 でもあのときのは鶏肉っぽかった。たぶん消化によさそうなものを選んでくれたんじゃないかな。


 この辺りで獲れる動物も何種類かいるのだろうか?


 でもまあ、わかったところで動物を捌くのはまだまだ私には難しそうだ。

 あの山芋のおかゆの作り方くらい覚えておきたかったんだけど、また機会を改めて挑んでみるよ。肉の腑分けなんて毎日やるわけじゃないだろうし。


 そうそう。山芋で思い出したけれど、オークさんの集落には畑らしきものもあったよ。範囲は集落の敷地よりも大きいみたいだ。何を植えてるのかな。


 男性型のオークさんたちの一部はこっちで働いてるみたいだった。あとオークニキとかは狩りに出てるっぽかったかな。


 私が食べた山芋っぽいものもここで育てたものなのかな。

 ファンタジーとか見てもオークさんが農耕してる光景ってなかなか想像がつかないけれど、わりと違和感なかったよ。


 農具は結構大雑把な造りというか、全体的に人間のものより二回りくらい大きくてクワとかも刃が分厚かった。

 たぶんオークさんたちの体格に合わせるとああなるんじゃないかな。手だって大きいわけだし。


 そっちの農具は私の手じゃ持ち上げるのも一苦労だから、手伝ってもあまり役には立てそうにないかな。


 そんな感じで、今日はメガネも復活したことだし集落全体を観察させてもらったよ。


 異世界生活十四日目。異世界の生活を学ぶ。

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