十三日目


十三日目


 やあ、家事レベル二に上がった私だよ。


 昨日は結局、子供オークの遊び相手になるくらいしか役に立てなかったのだけれど、今日は集落の中を歩いてみたんだ。

 オークさんたちは別に軟禁してるつもりもないようで、外を歩いても怒られるようなことはなかったよ。


 今日は昨日に引き続き、集落の中を歩いていたのだけれど、村の外れに小さな湖……いや、池くらいの大きさかな。まあ、ちょっと水遊びができる程度の大きさの水場があったんだ。


 この集落、温泉もあったし水源が豊富なのかな?

 それでオークさんたちが住み着いたんじゃないかと思われる。


 そこでオークさんたちが洗濯をしてたから、私も手伝わせてもらった。


 まずびっくしたのは、石けんがあったこと。


 なんか黄色っぽくて柔らかかったけど、水つけてごしごしするとちゃんと泡も立ってた。


 石けんってどうやって作るんだろう?

 実は結構歴史古かったりしたのかな。それともこっちは魔法みたいなもので作れるんだろうか? うーん、まったく知識がないことは推測もできないね。

 やはり勉強は大切だ。


 オークさんたちは汚れが酷いところは石けんをつけてゴシゴシ洗うけど、基本的には大きなタライに水を張って、あとは踏んづけて洗ってた。


 いやでもこれが意外に泡も立つし綺麗になるんだよ。

 私もいっしょに交ざって踏ませてもらったけど、ちょっと楽しかったよ。もちろんオークさんたちに比べたて体重もないし、あまり意味なかったかもしれないけれど。


 洗濯担当のオークさんは女性型だったよ。

 腰巻きの外に胸巻き(?)もしていた。三人で集落中の洗濯物を片付けてる感じだったかな。


 大変な重労働を担う彼女たちに敬意を表して、オークママと呼ばせてもらおう。


 私が漏らしてそのままにしてたパンツも、オークママたちが洗ってくれたわけだ。元の真っ白になって返ってきたから何事かと困惑したよ。

 感謝と羞恥に尽きない。


 そう、パンツはやはり元の世界のものが一番だ。


 履き心地もいいし、ちゃんとフィットするし、ノーパン腰巻きとか生きた心地しなかったよ。

 そりゃすっぽんぽんよりかはいくらかマシだったけれども。


 話を戻そう。


 洗濯というのはやはり力仕事だね。ニートにはなかなか荷が重い作業ではあったけれど、洗ったものを干すくらいはできる。


 オークママたちがパワフルに絞って水気を切ってくれるものだから、洗濯物は存外に重たくはなかったよ。

 と言っても数が数だからそう軽いものではなかったけれど。


 それと水場にはなかなか趣のある物干しが設置されていた。

 うん。言葉を選んだつもりだけれど、薪みたいにごつい木材を組み合わせたもので、あちこちささくれだっているものだから服に刺さりそうだったよ。


 ひとまず肌側になる方を上にして干してみたけど、あれ大丈夫なのかな?


 結局あまり大したことはできなかった気がするけれど、オークママたちは喜んで頭を撫でてくれた。


 なんかこう、小さい子が〝お手伝い〟できたのを褒められているような感覚だったけれど、まあ気にしないでおこう。


 異世界生活十三日目。この世界に来て初めて誰かのために行動した気がする。


 追記。

 これを読んでいる君。万が一君が女性だったなら、この日の記述は即刻破り捨ててほしい。

 男性だったなら、それに加えて記憶も抹消してほしい。頼んだよ。

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