十二日目
十二日目
制服返してもらえた!
ごめんよオークニキとオークさんたち。制服捨てたんじゃなくて洗ってくれてたんだ。ありがとう。
言葉通じないのに感謝をどう伝えればいいのかわからないけれど、私はとにかく嬉しいよ。
私は朝になってもちょっと凹んでたんだろうね。見かねたみたいにオークニキが制服を持ってきてくれて、思わず抱きついて喜んじゃったよ。
オークニキびっくりして跳び上がってたけど、オークさんにハグっていう概念あるのかな?
なかったらペットが奇行に走ったみたいに思われてそうだけど、この際気にしない。
昨日はJCの制服なんて愛着ないみたいに書いたけど、やっぱり思い入れあったみたいだ。
これは元の世界の大事な思い出なんだ。
あっちの世界がちゃんと存在して、私はそこで生きてきたんだっていう証みたいなものなんだよ。
だから返ってきたこともそうだけど、綺麗にしてもらえたことがすごく嬉しかった。
それと、制服って耐久すごいんだね。
地べたを這いずり回ったり川に流されたりしたのに、ほとんど破れてない。そりゃあ中学三年間着たものだし、袖や裾もほつれてきてはいるけれど、マンガみたいな破れ方はしてない。
あの材質とか書いてるタグはもう擦り切れて読めないけど、制服ってもしかして結構丈夫な生地使ってたりするのかな。
値段なんて気にしたことなかったけれど、きっと高かったんだろうな。
ごめんねお母さん。中学校まで何不自由ない生活させてもらったのに、こんな私になっちゃって。
もしも帰れたら、ちゃんと勉強しようかな。
今からでも間に合うかな。間に合わなくても勉強して、働けるようになりたい。
うん。私は元の世界に帰りたい。いや死んじゃったのかもしれないけれど、帰る努力をしたい。
手がかりは何もないし、言葉も通じない。そもそもそんな方法ないのかもしれないけれど、それでも戻りたいんだ。
そのためにはまずこの世界で生きていかないとだね。
だいぶ動けるようになったし、オークさんたちの……なんだろう、生活というか家事みたいなことを手伝ってみようかな。
それだけでもこの世界のことを学べるはずだし、あと体を動かすリハビリにもなると思う。
もちろんそういう打算的な理由がないわけじゃないのだけれど、私がこの集落に拾われて今日で五日。
今日までの五日間、ほとんど寝込んでいたことを考えると本当に死ぬ一歩手前だったんだろう。
それを救ってくれたオークニキたちに、何かお礼になることがしたい。ニートだって助けてもらった恩を返したいって気持ちくらいはあるんだよ。
ちょっと部屋の外を覗いてみる。
そうそう、ちゃんと書いてなかった気がするけれど、この建物には仕切りがなくて部屋はひとつだけだよ。オークニキもこの部屋で寝るし、私は隅っこの方で用意してもらったベッド(?)で寝てる。
表は広場になっていて、それを囲むように家が並んでいるよ。夜になるとたき火が始まるし、その火でご飯とかも作ってるみたいだった。
今は昼間なのだけれど、外じゃオークさんたちが忙しなく行き来してる。
木材を運んでるオークもいれば何かを作ってるオークもいる。見える範囲に水場がないせいか、洗いものや料理をしてるのは見当たらない。まあ、そういうのは室内でやるものだろうしね。
うーん、勝手に外に出たら叱られるだろうか?
すぐにはできることが思いつかないし、しばらくオークさんたちの生活を観察してみるよ。
異世界生活十二日目。ニートの恩返し。
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