十日目
十日目
やあ、生まれたての子鹿みたいに立ち上がれるようになった私だよ。
正直、あの虫と雑草の毒物を食べさせられたときは死を覚悟したものだけれど、信じがたいことに翌朝には身を起こせるくらいまで快復していた。
あの薬、現代日本より進んでるんじゃないのかい?
まあ、立ち上がるのが精一杯でまだ歩き回るのは難しそうだけれど。
オークさんも私の快復具合を見て少しはものを食べられると判断したのか、今日はおかゆもどきの他に少量の肉も出してもらった。
正直、なんの肉か考えると怖いんだけど、体はタンパク質を求めているんだ。
食感としては鶏肉みたいな感じだった。ササミとかの脂身の少ない部分。
オークさんたちも調味料って使うのかな。わりとしっかり濃いめの塩味でなかなか美味しゅうございました。
それと寝床なんだけど、動物の毛皮で作ったお布団だよ。
中には葉っぱか何かが詰められているみたいだ。少し硬くて押さえるとわしゃわしゃって音がする。なかなか温かくて寝心地もいいよ。
でも、なんでオークさんはこんなに優しくしてくれるんだろう。
部屋から見える範囲じゃ、他に人間はいそうにない。住民もオークしか見当たらないし、商人みたいな外部の種族が入ってくる様子もなかった。
食料として肥え太らされてるんじゃないかと勘ぐりたくなるけれど、もうそれでも許せる気がしている。
我ながらちょろいとは思うけれど、それくらいオークさんが差し伸べてくれた手は温かかったんだよ。
ああ、でも食後にまたあの毒物を食べさせるのだけは勘弁してほしい。
そりゃあ効果があるのは身に染みてわかったけれども、あれ臭いも味も酷いんだよ。
あと、子供のオークがちょいちょい部屋を覗いてくるからちょっと指遊びに付き合ってあげたら喜んでた。
この世界、ジャンケンそのものはないみたいだけど、似たような遊びがあるみたいだったよ。
グーとパーは同じで、チョキの代わりに指でものを掴むような形を作るらしい。こう、口を閉じるジェスチャーみたいな感じかな。
日本じゃチョキはハサミだけど、こっちの形はどういう意味なんだろうね。食べるとか?
他に簡単な遊びとか教えてあげられればよかったんだけど、ちょっとすぐには思い出せなかった。
紐とかあったらあやとりとか……いや、私あれ下手だから無理だな。
今日はこの世界に来て初めて笑ったような気がするよ。
おっと、オークニキが手招きしてる。なんだろう? ご飯ってわけじゃなさそうだけど。
うーんと、お腹? を、持ち上げる? 違うな。バンザイ? いやこの世界バンザイとかってあるのかな。
あ、バンザイでよかったみたいだね。オークニキが頷いてる。
ええっと、下ろすのはダメ? バンザイしとけってこと?
あれ? いやちょっ
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