六日目
六日目
スマホが死ぬ。
異世界生活六日目。昨日は姫ニャンのあとを追いかけてはみたものの、やっぱりそう上手くはいかないもので住処みたいなところは見つからなかった。
動くとそれだけお腹も減るし、持ち歩ける食料もせいぜい木の実五つ六つくらい。
それに陽が暮れたら視界も利かなくなるしで、夕方になる前に元の場所に引き返したよ。
今朝になってからスマホの存在を思い出して、せめて姫ニャンの写真だけでも収められまいかと(ファンとして)五日ぶりにスマホの電源を入れてみたんだけど、なんとバッテリー残量が残り四十八パーセントまで減っていた。
スマホって電源落としててもこんな勢いでバッテリーなくなるんだね。知らなかったよ。
電源落とす前が確か七十九パーセントだったと思うから、保ってあと六日ってとこだろうか。
文明の利器なんてサバイバルじゃ役に立たないんだって思い知らされた気分だよ。
自然消滅する前に何かに使ってしまった方がいいだろう。
そんなわけでひとまず異世界の草原をバックに自撮りしてみたよ!
……なんかもう、自分の遺影でも撮ってる気分で止めときゃよかったと後悔したよ。
顔も脱水症状からは立ち直ったからいくらかマシにはなったものの、今度はやつれて酷い顔だし、あと一週間近くお風呂に入ってないもんだから顔も髪もベタベタで汚いし、本当になんで撮ってしまったんだろう。
おまけに白髪だから、知り合いが見ても私と気付いてはくれないだろうね。でも最期の記録になる可能性が高いから消すに消せなかった。
これを読んでいる君がモバイルバッテリーあたりを所持していたとしても、どうか私のスマホは中身を見ずに廃棄してほしい。
まあ、そのころにはスマホなんて壊れてるとは思うけれど。
そういえばライッターで最後に投稿したのなんだっけ?
そう思ってアプリ開いてみたら、意外にも最後に開いたタイムラインが表示されたよ。まあそのページが更新されることはないけれど。
ちなみに最後の更新は「電池なくなった コンビニ行ってくる」だってさ。私、乾電池のために死んだらしい。
フォロワーさん十人くらいしかいなかったけど、誰か私が死んだことに気付いてくれるかな。
いやたまにリプくれる人もいたけど、ネットでそんな心配する人もいないか。せいぜいライッター飽きたんだろうな、程度に思ってもらえるくらいだろう。
普通に誰も気付かないまま忘れられるだけだろうね。
いかん、書いててだんだん悲しくなってきた。
とにかく今日も姫ニャンを探して追いかけてみるよ。
姫ニャンは腰巻き程度のものだったけど、服を着てたんだ。服を着る文化があるなら野生動物みたいな暮らしをしてるわけじゃないはずだ。
つまり姫ニャンが私の生きる希望ってことだね。
異世界生活六日目。今日も姫ニャンを追いかけるよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます