第8話 離れ離れ
それから一ヶ月が過ぎ ――――
「なあ兄貴、アイツ…じゃなくて…彼女、綾霞ちゃん来なくなったけど……」
「……別れたけど」
「別れた?どうしてまた?」
「好きな人がいるからって別れ告げられた。てっきり聞いてるかと思ったけど」
「聞かねーし。例えメールのやり取りしていたとしても随分としてないし。俺が綾霞ちゃんにメールする理由なくね?友達としてお互いしても良いんだけど」
「まあ、とにかくそういう事だから」
「そっか…」
そして ――――
♪~
『どうも、どうも、イケメンこうが君でーす』
『兄貴と別れたというのは本当でしょうか?あやかくん』
♪~
『どこがイケメンなんでしょうか?こうが君』
『なおきとは別れたよ』
♪~
『じゃあ本当だったんだ』
♪~
『 それで?他に用事あるの?』
♪~
『確認したかっただけ』
私達はメールのやり取りをして、恒河に彼女いる事が分かる。
♪~
『じゃあ、メールも電話も禁止じゃん!』
『それではさようなら!』
『彼女と、お幸せに!』
♪~
『女友達の一人や二人はいても良いんだけど』
『彼女も男友達の一人や二人はいるし、お互い様』
♪~
『こうが、優しいから呼び出したら飛んで来そうじゃん?』
『何かあったら連絡頂戴。まず、ない事を祈るわ!』
『私からは連絡しないでおくね』
別々の道
二人の人生は
別れ道
でも本当は
最初で最後の
最高の異性友達に
なるはずだった
そしてまた
あの頃のように
私達二人は
離れ離れになっていく
「お姉ちゃん、私、近々、引っ越してひとり暮しするから」
「えっ!?また、急なのね」
「うん、お互い彼氏出来たら遠慮しちゃうから。お姉ちゃんも良い歳だし」
「良い歳って、まだ25よ」
「もう25だよ」
「綾霞っ!」
私はクスクス笑いながら
「私も来年は忙しいし」
「そうね。21だから色々と大変になるわよね?」
「うん」
そして私は一ヶ月後、引っ越しをした。
「ねえ、ひとり暮しどう?」
由佳里が聞いてきた。
「ひとり暮し?気楽だよー」
「そうかぁ~。だけど不安じゃない?」
「うん。確かにそれはあるかも」
私達は色々話をしていた。
そんなある日の事だった。
友達と飲みに行き別れた後の事。
「尚貴」
ドキッ
聞き覚えのある名前を呼ぶ声がし視線を向けると、そこには尚貴とお姉ちゃんの姿。
「結局、付き合ってるんだ……」
私は複雑な心境の中に幸せな二人を見て安心している自分がいた。
そして、その後の事だった。
「恒河、お前飲みすぎだろう?大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。じゃあなぁ~」
「馬鹿。恒河、そっちじゃねーよ!」
≪今、恒河って≫
私は辺りを見渡す。
すると見覚えある顔。
やっぱり恒河だ。
見た所に寄るとかなり酔っているのが分かる。
足元がフラついている恒河を見てると、こっちがハラハラし危なっかし過ぎる。
でも、連れて帰るにも、今さっき見掛けた二人に出会(でくわ)すのも問題だ。
私の部屋?
それはそれで抵抗があるけど……
「………………」
「恒河っ!」
「…あれ…?…綾霞じゃーん!久しぶりーっ!」
「君、恒河の知り合い?」
「一応…」
「おいっ!一応って何だよ!それに俺達、知り合いというより友達なんだから」
酔った勢いの本音なのか、友達と認めてくれている恒河の一言に胸の奥が小さくノックした。
「数か月前までは良く連絡取り合っていたし」
「そうか。じゃあ、コイツ任せて良いかな?俺、この子送らないといけなくて」
可愛らしい女の子の姿。
「えっ?あっ、でも…」
「頼む!コイツ彼女にフラれてスッゲー、ヘコんでて……」
「彼女?えっ?フラれたの?」
≪何があったんだろう?≫
「フラれた……慰めてぇ~、綾霞」
私に抱きつくようにする恒河。
ドキッ
違う意味で胸が大きく跳ねた。
「いや、でも…尚貴…と会うのは…。さっき、私のお姉ちゃんと一緒にいる所を見掛けたし…」
「兄貴?」
「うん……一緒に住んでる……」
「あー、そいつなら、今、ひとり暮しだから」
「えっ!?」
「そう。俺、一ヶ月前に引っ越した。だから心配しなくても兄貴には会わねーよ。安心しな」
変わらない恒河の優しさ。
彼の気遣いが私の胸の奥を小さくノックした。
「そう…なんだ」
「そういう事。つー事で綾霞ちゃんを招待してあげよう!肩貸して綾霞」
「う、うん……」
甘えるような恒河。
私の知らない恒河に私の胸はざわつく。
「じゃあな!あきら!ゴメンな!付き合わせて。彼女送ってやれよ」
「ああ。じゃあな!ごめんな。綾霞ちゃん…だっけ?」
「はい」
「そいつの事宜しく!」
「分かりました」
私達は別れた。
「あの女の子……高校の同級生じゃないかなぁ~?」
「えっ?」
「さっきの女の子」
「あー、恒河君の友達っていう?」
「そう。高校の時、学校のマドンナって有名な子いて、その子にスッゲー似てる」
「へぇー、そうなんだ」
「恒河、その子に片想いしてて、告白しないまま別れて…アイツ、スッゲー後悔してた。当時、彼女も満更じゃない気がしたけど……」
「本当は相思相愛だったって事かぁ~……それが、もし本当なら、またこうして再会したのって凄い事だね」
「いや、本当、確かにそうだよな」
私達は、そんな事など知るよしもなく、恒河の指示に従い部屋を知らない私はタクシーで恒河に誘導され移動し何とか恒河の住む部屋に到着。
「じゃあ恒河、私帰るけど一人で大丈夫?私も飲んでるし戻って体休ませ……」
グイッ
私の手を掴み引き止めた。
「泊まっていけば?」
ドキッ
胸が大きく跳ねた。
「えっ?」
そう言う私に背後から抱きしめられた。
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「一緒にいて欲しい……。今日だけ……」
「……恒河……」
そして、抱きしめた体を離す恒河。
「俺、彼女にフラれて、お前にメールしようとしたけど辞めた」
「えっ?」
「お前も兄貴の事で大変だっただろうし……とにかくあがりな」
迷ったあげく、恒河を放って置くのは心配である。
私はあがる。
「う、うん…」
「それに弱味見せんの恥ずかしいし勿論、男女問わず弱味見せんの嫌かもしんねーけど…だけど…お前に見せんの何処か嫌だったんだ」
「…………」
「だけど、こうなるって分かっていたら最初から連絡すれば良かったかもな」
「…恒河…」
「何でだろう?女友達の一人なのに、お前にだけ見せれねーのって不思議だよな……。どうしてかブレーキ掛かって…。メールしたり連絡すれば良いことなのに…たったそれだけなのに出来なかった……」
「告白と…似てるかも…」
「えっ?」
「本当は好きなのに意地張ったり、強気な事を言ったりして…。たった一言…好きって言葉が言えないような感じ」
「………………」
「でも…それって…相思相愛から本当、後悔って文字を背負ったままじゃん?」
「そうだね…だから似てる部分あるのかな?って…。あっ、キッチン借りるね。コーヒー作…」
グイッ
腕を掴み引き止められ背後から抱きしめられた。
ドキン…
「…恒河…ちょ…」
胸がドキドキ加速する。
「…何もいらねーよ…。しばらくこのままでいさせて欲しい」
ドキン…
その一言に胸が小さく跳ねる中、私の胸は再びドキドキ加速する。
フワリと抱きかかえられ、お姫様抱っこをすると、ベッドに乗せる。
ドキーッ
「えっ?こ、恒河?」
≪飲んだ勢いとか、成り行きとかって冗談≫
私の上に軽く乗るとキスをした。
ドキッ
「一緒に寝よ♪」
「えっ!?一緒に寝るっ!?」
かぁぁぁぁ~っと赤くなるのが分かった。
「綾霞…顔赤い」
「し、仕方ないじゃん!」
「もしかして兄貴とヤってないの?」
「ヤ、ヤってって…?えっ?」
「………………」
「つーか、一緒に寝るって何か誤解してる?」
「いや……でも…寝るって言ったら寝るしか…ない……」
再びキスすると抱きしめる。
「成り行きとか、そういうのはしたくないから安心しな」
そう言うと、スーッと寝息が聞こえた。
「…えっ…?恒…河…?」
「………………」
「……バカ……」
私は微笑むと、恒河にキスをし、私も瞳を閉じた。
朝、目を覚ます。
目の前には恒河の顔。
ドキッ
≪わっ!そうだ!昨日は……≫
急に心臓がバクつく。
私は寝返りをし恒河に背を向けると同時に背後から抱きしめられた。
「えっ?」
「綾霞?」
ドキッ
「な、何?ていうか覚えて……」
「うん」
「……………」
グイッと振り返らせたかと思うと私の上に股がった。
ドキッ
「綾霞って…本当、高校の時の同級生に似てんだよなぁ~。俺と会った事ない?」
「ないと思う」
「じゃあ質問、何処の高校だった?」
「えっ!?高校?えっと……○○、…かな?」
「○○!?」
「うん…」
「そっか」
「恒河は?」
「俺?俺は……忘れた」
「えっ!?」
クスクス笑うと私からおりると、私の体を引っ張り起こすとキスをした。
ドキッ
「ちょ…ちょっと……彼女にフラれたくせにキスする…」
再びキスをした。
「綾霞……出かけようぜ」
「えっ?」
「つーか付き合えっ!」
「ちょっと!ものには頼みようが…」
クスクス笑う恒河。
「お互い準備あるだろうし、連絡するから待ち
合せしね?」
「それは…良いけど…」
「連絡先変わってない?」
「うん」
「了解!じゃあ連絡するから俺とデートして♪」
「分かった!じゃあ付き合ってあげる」
「やった!」
私達は待ち合わせをし出掛けた。
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