第7話 嘘、別離

「綾霞、この前はごめんね。せっかくのデートだったのに」



お姉ちゃんが言ってきた。



「別に良いし。それより尚貴に聞いてみたら?」


「えっ?」


「好きだった人に似てるんでしょう?」


「それは…でも、もう過去の事だから今は別に」


「良いんじゃない?誰だって心残りの人とかいるよ。思い出の人とか。例え付き合っている人がいたって心の奥の隅には忘れられない人くらいはいると思うよ」



「綾霞……」


「ただ、言わないだけ。思い出は消えないから。世の中、男と女しかいないじゃん。1つの出逢いが恋に進展したり、友達であったり……。尚貴に確認してみても良いんじゃない?好きだった人の条件に満たせばラッキーじゃん!」



「別にする必要もないわよ」

「どうして?」

「思い出だけで良いって時もあるから」

「えっ?そうかな?」


「そうよ。もし好きだった人でも触れない事も良い時だってあるから」



「…………」



「本人だったらそれは嬉しいかもしれない。だけど…本当の事を知らない方が良かったって思う後悔もあったりするからね」



「…………」



「とにかく私と尚貴君は何もないから。綾霞は逃げないで尚貴君と向き合って」


「……う…ん……」



お姉ちゃんは席を外した。




「何もないからって……キスしてたじゃん……そういうお姉ちゃんこそ…逃げてるよ……」





ある日のデートの日。




「尚貴、車止めて」

「えっ?あ、うん」


尚貴は車を道路の脇に止めた。



「尚貴、お姉ちゃんの事どう想う?」


「えっ?どう思う?って…綾霞いるのに、そんな事聞かれても綾霞以外の人と付き合う気なんてないし、お姉さんの事は何とも想ってないよ」


「じゃあ聞くけど、付き合って数か月以上経つのにHをさせない彼女とこのままやっていける?」


「綾霞、俺の事嫌いになった?」


「嫌いになったとか、なってないとかじゃない…正直…良く分かんない…」


「えっ?良く分かんないって…」


「お姉ちゃん、尚貴が昔好きだった人に似てるんだって」


「あー、そうらしいね」


「似てる人は似てるままなのかな?結局、その人の事好きになったりするの目に見えてるし」


「綾霞…」


「本当は好きなくせに良い言葉並べて、その気のない事ばかり言って…。…それに私も気になる人いるから別れよう私達」


「綾霞…本気で言ってる?」


「嘘ついてどうするの?気になる人いる中、付き合っていく気ないから」



「…………」



「それに、私、二人がキスしている所見たし!」


「えっ!?」


「それで何もないって、お姉ちゃんは嘘つくし!案外、体の関係もあったり……」




キスされた。



「それはないよ!」

「そ、そんなの口では簡単…」



再びキスをされ、首スジに唇が這う。



「や、やだっ!辞め…」



抵抗し暴れる私だけど、かなうわけがない。



「な、尚貴っ!辞め…」



「…………」



「ごめん……綾霞…。綾霞と、これ以上一緒にいると傷付けるから送れない。タクシー代渡すからタクシーで帰って欲しい。俺も一人になりたいし……」




そう言うとタクシー代を渡された。



「綾霞の事…マジだったけど…傷付けてごめん……付き合ってくれてありがとう」



私は車から降りタクシーを拾い帰る事にした。




「あら?早かったわね?」

「お姉ちゃん、尚貴と付き合って構わないから」


「えっ?」


「好きなんでしょう?尚貴の事」

「何言って…」


「私見たの!二人がキスしている所!相手の事を好きでもないのに彼氏が私以外の人とキスする所を見て、このままやっていけるわけないじゃん!案外さ体の関係もあったりするんじゃない?」


「綾霞っ!誤解よ!体の関係なんてあるわけないでしょう?」



「………………」



「別に良いよ。あっても、なくても。もう関係ないし!私も好きな人いるし、ちょうど良かったから。尚貴にも話をしてキチンと別れたから」



私は自分の部屋に移動した。











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