第6話 モヤモヤ関係、助け船
あれから恒河とは、その後もメールのやり取りをする機会が増えてきた。
ただ、私の心の中はモヤモヤがある。
――― それは ―――
お姉ちゃんと尚貴の、その後の関係だ。
結局、お姉ちゃんからも尚貴からも何も情報はなく、月日だけが過ぎるのだった。
尚貴と付き合い始めてから数か月が過ぎ ―――
何度か体の関係を求められたものの私の心は不安定。
うまく交わしているんだけど、正直、私達の間の関係も気付かないうちに見えない亀裂が
ゆっくりゆっくりと少しずつ少しずつはしり始めていたのかもしれない。
ある日の事。
「ねえ、綾霞、彼氏とは続いてるの?」
「あー、うん」
「そう?それなら良いけど、私の知人に悩んでいる人がいて、だから綾霞は大丈夫かな?って気になっちゃって…」
「そうなんだ。私は大丈夫だよ」
「それなら良かった。早く会わせて紹介してね」
「えっ?」
「全然連れて来ないから、私、いつも待っているんだけど」
「あー、彼氏忙しくて」
「そうなの?デート出来てる?」
「あー、うん」
「そういうお姉ちゃんは、どうなの?何か進展あったの?」
「えっ!?ないわよ。後は昔好きだった人に似てるだけ」
「そうなんだ」
それ以上は何も聞けなかった
本当は聞き出したかったけど
真実を知る怖さもあった
数日後のある日の事だった。
「じゃあね、綾霞」
「うん、またねー」
友達と別れた後の事だった。
「綾霞」
「…尚貴…」
「ごめん学校の近くまで来たからこっちに寄ってみたんだ」
「そうなんだ」
「それより今夜デートしない?」
「デート?急だね?別に良いけど」
「じゃあ後で迎えに来るよ」
「待ち合わせしようよ」
「でも、危ないよ」
「大丈夫だよ。お互い色々と準備あるし。待ち合わせ場所と時間を連絡頂戴」
「そうだね。じゃあ後で連絡する」
「うん、また後で」
私達は別れた。
その日の夜。
私は待ち合わせ場所に行くと同時に声をかけようとした時だった。
「あれ、尚貴君」
と尚貴に声をかける人影。
私のお姉ちゃんだ。
「………………」
「奇遇ね?誰かと待ち合わせ?」
「はい。彼女と」
「あっ!じゃあ彼女が来る前に去らなきゃ」
「……もう遅いよ……。せっかくだし二人で出かけてくれば?」
「「綾霞」」
二人が同時に言った。
「「えっ?」」
更に再び同時言った。
「私の彼氏、今、お姉ちゃんの目の前にいる人なんだ」
「えっ!?」
「それから尚貴の前にいる人、私のお姉ちゃんなんだ」
「えっ!?お姉さん!?」
「………………」
「二人で出かけて来なよ。私、ここに来る前に大親友から泣きながら連絡入って尚貴とデート出来なくて断る所だったの」
「綾霞」
「だから行けなくて、せっかくのデートだったんだけど……ごめん。私、友達の事が心配でデート所じゃないと思うから、またね!」
「綾霞っ!」
私は足早に、その場を去った。
「……ごめんなさい……私……」
「……いいえ……」
「………………」
嘘をついた
連絡なんて
一切なかったのだから ――――
私は振り返る。
すると二人は街の中に消えていく
そして私は
たった一人淋しく
二人の後ろ姿を
見つめるしかなかった………
泣きたい
でも
涙は流れてこない
だけどこんな時
誰かに傍にいてほしい
そして私は
1つの橋に
助け船を求める
♪~
『今、何してる?』
『逢いたい あやか』
意味深なメールをあなたに送る。
そして
助け船からの
連絡を待つ
だけど
変化のない携帯の画面
あなたは
今
何をしているの?
♪~
『あやかくん』
『この意味深なメールはよしたまえ!』
♪~
再びメールが入ってくる
『兄貴とラブラブデートじゃなかったのか?』
『兄貴、お前と出かけて来るって言って出かけたけど?』
♪~
『確かに待ち合わせ場所に行ったものの問題が発生して事情あって出来なくなって』
『良かったら会えないかな?と思って』
♪~
『良くないから会えない』
♪~
『そうか…分かった…ごめん』
私は帰るしかないと思う中、真っ直ぐ帰りたい気分でもなく街の中をブラブラしようとしたものの行く宛など見付からず、その場に立ち竦む。
時間潰せそうなのはファーストフード店?
その時だ。
「かーのじょ、デートしない?」
グイッと肩を抱き寄せられた。
「きゃあっ!えっ!?恒河ぁっ!?」
「おっ!ナイスリアクション♪呼び捨ても良いね♪」
嬉しそうな笑顔を見せる恒河の姿に私の胸の奥が小さくノックした。
「な、何で?」
「さあ?何ででしょう?」
「意地悪」
クスクス笑い私の手を握る。
ドキン
私の胸が大きく跳ねる。
「街の中の女の子の一人歩きは危険過ぎるから」
「……恒河……」
「恋人繋ぎが良い?それとも普通に繋ぐ?夜道は危険がいっぱいだから、この手を離すわけにはいかないから」
優しい半面
憎まれ口を叩くあなた
優しかったり
突き放すように
冷たくするあなた
でもそんなあなたが
何処か
愛おしく思えた
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