第5話 一本の橋

ある日の休日。



「あら、珍しい。今日は俺とデートじゃないの?」


「彼氏、用事があるって」

「そうなの?せっかくの休日なのに残念ね」

「うん。お姉ちゃんは、お出掛け?」


「うん。この前友達の付き合いで合コンに参加した時の男の人と出かけて来るから。ご飯は適当に済ませて」


「そっか。分かった。行ってらっしゃい」

「行ってきます」



出掛けるお姉ちゃん。




「お姉ちゃん、尚貴と出かけるんだろうな…。私の彼氏って知らないから」



私も外出することにした。


家にいても色々と考えてしまうのもあり落ち着かない為、外出した。




ただ何となく歩く街中


ただ何となく歩く街並み


歩き慣れた街も


今日は何処か寂しかった……





その途中。



「あれ?綾霞ちゃん?」



名前を呼ばれ振り向く視線の先には恒河君の姿があった。



「恒河君」



まさかの意外な人物に驚いた。



「一人?兄貴と一緒じゃねーの?」

「あ、うん…。尚貴、用事があるとか言ってたし…」


「そっか。まあ、毎週デートもなぁ~。たまには良いんじゃね?」


「うん…そうだね…」



私は微笑み背を向けると去り始める。



「じゃあね」

「ああ…」



私達は別れ始める。



すると ――――




「ねえ、彼女。良かったら俺とデートしない?」




グイッと肩を抱き寄せられた。



「えっ?」


「なーんて言ってみる?」




おどけた笑顔を見せる恒河君。



「…恒河君…」


「一人よりも二人が良いっしょ?それとも一人が良い?」




首を左右に振る。



「家にいてもつまらないから…目的もなく家を出て来たから…」


「そっか。じゃあ行こうぜ!」


「うん」


「綾霞ちゃんって俺が前、好きだった人と同じ名前でさ、最初、兄貴から名前を聞いた時、すっげービックリして…」



≪そういえば…私の好きな人も…こうがって名前だった≫



「でも、同姓同名とかあるわけじゃん?正直、雰囲気も似てて…だけど似てる人って世の中3人いるって話だし」


「確かに聞くよね?」



私達は一日を楽しんだ。






寂しかった街並みも


一気に明るくなった


この時間


この瞬間


私は


この時間だけ


二人の存在は


記憶からなくなっていた






その日の別れ際 ――――




「ごめん…今日はありがとう」

「いいえ。それじゃ」

「うん」



私達は別れ始める。




「綾霞ちゃん」



グイッ

私の手を掴み引き寄せると抱きしめた。



ドキッ

突然の出来事で私の胸は大きく跳ねた。



「…恒…河…君…」




スッ


抱きしめた体を離す。




「またな!綾霞ちゃん!」



笑顔を見せると私の前から去りながら



「綾霞ちゃんの何処かに宝くじ入っているから」


「えっ!? 宝くじ?」




私は首を傾げ、恒河君と軽く手を振り合って別れた。




「…宝くじ…?……何だろう?」





ポケットの中?


バックの中?




私は気になり探す。



バックのちょっと奥に入った所に紙が入っている事に気付いた。



「…これ…かな?」




『アタリ』



そう書かれた文字。



『あなたは見事に当選しました』


『俺の連絡先です』




私はクスッと笑う。



そのメモ用紙には、メールアドレスと携帯番号が書かれていた。


一先ず、携帯番号を入力し送ってみた。





~ 恒河 side ~



♪~



『あやかです。とりあえずショートメールを送ってみました』



絵文字混じりで彼女からのメールが届いた。




~ 綾霞 side ~



♪~


『こうがです。当選おめでとうございます。連絡先どうしようか迷ったけど取り合えず渡しておこうと思って』



絵文字混じりのメールが彼から届いた。



恒河君から、お兄さんである尚貴には弟の俺から伝えておくからと言ってくれた。







一枚の紙から


携帯メールが始まり


一通のメールから


二人の橋が繋がる



この橋が壊れないように


何かあった時に


必ず渡れるように……




まだ気付いていない私達に


胸の奥にしまっている


秘めたままにしていた


恋の芽は



後悔した


私達の小さな恋は


今度は実るのでしょうか?


花は咲きますか?













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