第4話 転生?転移?


慎重に、大真面目に。最も重要な質問をそいつへと投げかける。

しかし返ってきたのは、溜め息と額に手を当てる仕草だけ。




「こんなところまで追ってきてくれたのは嬉しいがその気持ちには応えられない。悪いが俺は女の子が好きなんだ」

「…おい待て」


「凄く、凄く女の子が好きだ。いや、偏見とかそう言うのじゃなくて。単純に女の子が好きだ。」

「話を聞け」



「女の子のどこが好きかと言うとまずは匂い。あとー」




きっと動揺していたんだと思う。

奴の言葉を食いに食った俺は、再び地面へと埋められた。




「次は血が流れると思え」


「ず、ずびばぜんでじだ…」





「貴様は嫌いだ。それに、此処は死後の世界では無い」




構わず話し続ける奴の言葉は、




 

   「ヴィズだ」






俺を硬直させた。





「ヴィズ?!ヴィズ区域だと?!…ってことはリベルタ王国の国境付近ってことか…?」


「良く知っているではないか」





知っているも何もヴィズ区域は、リベルタ王国は、


俺の作った空想バクの地名なんだ!





「じゃあじゃあ、サタール王国も麟華帝国もあるんだな?!」

「あぁ。」


「5つの国と5つの区域から成ってて!」

「…あぁ」


「複数の種族が共存してる!」

「何を当たり前のことを言っているんだ」





大方の確認を終えた後、両手を合わせて目を輝かせる姿は我ながらに乙女のようだ。その証拠にほら、カミルが気持ち悪がっている。




こんな反応薄いくらいだろ。だって…だって此処は、














   俺の夢の世界バクなんだから!














この空気の味が、この傷の痛みが、全て本物だと俺に訴えかけている。

…となると俺は死んだ?死んでいない?まさか…これが所謂転生?


冗談じゃない!俺は此処で見た物聞いた事、全てをバクに書き出し世に発信する義務がある。転移でなく転生ならばそれは叶わないではないか。


うーんと悩む俺を首を傾げ見つめてくるカミル。冷酷非道な悪役とは思えない姿になんだか拍子抜けしてしまうけど。




「俺は死んだはずなんだ。トラックに轢かれて…つってもトラックは分からないか。とにかく、俺にとって此処が転生先の世界なら糠喜びと言うかなんと言うか…転移ならいいんだけどなぁ…」


「…貴様も不死身なのか?」




掛けるようでいて独り善がりな言葉は先程みたいに無視されると思っていた。

しかし、今までで一番の反応を見せるカミルは前のめりに俺に問う。





「いや、俺は不死身じゃないけど…そうか、あんた不老不死設定だったな」




カミル・ド・ウェフダーは完全無欠だ。強くて頭が良くて容姿端麗。年も取らないし死ぬこともない。


人の願望を全て詰め合わせたキャラクター。




「いいよなぁ。俺もあんたみたいに不死身で完璧だったらあんな交通事故屁でもな…」




呑気に見上げたその表情は作者の俺でも知らない。

優越感でも怒りでも無い、どこか寂しそうなものだった。


詰まる言葉を最後に、2人の間に流れるのは沈黙だけ。それを破ったのはカミルだった。



「…完璧なものか」


「同族からも化け物扱い。心臓を貫かれ、首を落とされ…それでも終えれぬこの生を非力の貴様がどうして背負えるか」









「…不死身の身体なぞ、最大の欠陥品よ」









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