第4話 ダメみたいですね

 王都についてからとりあえず俺たちはスマホを売りに行く。

 どっちのスマホを売るかという話になったが、俺のほうを売ることにした。

 まあ写真とかもゲームのスクリーンショットしかないし、ゲームもアカウント連携しているのであまり傷はない。

 問題はどこで売るかという話だがこれが難しい。

 この世界の相場とか分からないから安すぎる値段で買い取られたら最悪だからだ。

 本来ならそういうのをリサーチしてから買い取りに出すべきだが無一文の俺達にはそんなことをしている余裕はない。

 結果、そういう理由で賭けの要素もあるオークション形式で買取してもらったのだがこれが案外成功だった。

 余裕で持ち歩けないほどの大金を得ることができたのだ。

 とりあえず借りたお金を返しにいくために俺たちは借りた額より少し多めの金と王都で買ったお土産用のクッキーを持って先ほどの村まで戻って来た。

 さっき村の人にパルシアさんの家はどこか聞くことができたので今向かっているところだ。


「いやめちゃくちゃすごい金額で売れたけど、あれ充電切れたらどうしよう」

 

 俺は持ってきたお金を見ながら言った。

 さっきは2人で大喜びしてたけど座って冷静になってみるとそんな不安がよぎる。

 マジックアイテムとして扱われてたし何だかやばい気もする。

 怖いお兄さんとかが追いかけてきてボコボコにされたら最悪だ。

 この世界には殺しちゃダメとかいう法律もないかもしれないし、もしかしたらボコボコにされる程度じゃ済まないかもしれない。


「た、確かに。まあ写真の機能使ってもらうだけならそんなに減らないと思うけど…高額なものだしあんまり使わずにコレクションとして飾ってくれることを願うしかないわね…」


「確かに滅茶苦茶な値段だったし、その可能性が高いな。でもまあ、いざという時のためにも対抗できる力があるといいよな」


「そうね…。そういえばこの世界って魔法とかあるのかな?今のところそんなの全くできそうにないんですけど」


「ここ来るときなんかワープみたいの出てきたしわんちゃんありそう」


「確かに」


「まあ、そこらへんも様子を見て聞きたいところだな。せっかくやさしい人に出会えたことだし」


「そうね。分からないことが多すぎるものね」


 そうこう言っているうちに目的地へと着いた。

 非常に失礼な表現かもしれないがパルシアさんの家は地味ながらも温かみのあるような木製の家だった。

 インターホンとかはないのでドアをたたくしかないわけだが、N㊙Kの集金くらいでしかそんなの見たことがない。

 やはり躊躇してしまう。


「お、変な格好のやつが俺の家の前にいると思ったらやっぱりお前らか。早速返しに来たのか?滅茶苦茶早いな驚いたぜ」


 人に会う度に変な服装と言われるのだがそこまで変だろうか…。

 俺たちの感覚だとこちらの世界にいる人たちの服装の方が変な服装だと思ってしまう。


「そうです。とても助かりました!」


「まあ、こんなとこで話してもしょうがないしな。取り敢えず中に入れよ」


 そうして俺たちはパルシアさんの家に招かれ、お茶を出された。

 取り敢えず俺たちは持ってきた金とお土産を渡す。


「こんなものまで悪いな。それで今頃言ってもあれかもしれないが…あんな貴重なもの売っちゃって良かったのか?」


 正直この世界については何にも知らない状態だ。

 色々と聞きまくりたいところだが、流石に何も知らなすぎるのはまずいだろう。

 怪しすぎるにも程がある。

 敵国のスパイか?とか言われたらいきなり処刑ルートだ。

 まあそもそも国が複数あるのかとかそこの段階から知らないわけだが。

 たった1つの発言でいきなり人が変わったようにキレて襲ってくるっていうの漫画とかでありがちだからな。


「まあ、珍しいですけど、そんな使ってなかったんでしょうがないですね」


「そうか。それで、これからどうするんだ?」


 随分さらっと流すんだな。

 自分から聞いといて『そうか。』だけで終わるのか。

 これこの人に色々聞いちゃって大丈夫なやつか?

 俺は坂内の方に目をやると向こうもこちらを見ている。

 この人に聞くかどうか問いかけているのだろう。

 俺は頷いた。

 

「ち、ちなみに魔法とかってどうやって使うんですか?」


 坂内が聞いた。

 確かに一番大事なのは身の安全だ。

 王都の人たちはなにやらすごそうな剣を持ち歩いていたが素人が扱えるものではないはずだ。

 俺の場合、正直両手で持ち上げられるかすら怪しい。

 そこで必要なのが魔法やらなんか凄いスキルだとかそんなのだ。


「お?なんだお前ら、そんなのも知らねえのか?」


「すいません…」


「別に謝ることじゃねえだろ。まあ使い方ってよりは完全に才能だがなあれは。ちょっと待ってろ」


 そう言ってパルシアさんは席を立つと水晶のようなものを持ってきてくれた。


「ほら、これに触れてみろ」


 なるほど。

 ここで有り得ない反応が起きるっていうのがお約束だな。

 いや、そうでなかったら本当に有り得ない話だ。

 わざわざ運動音痴のやつをここに呼んだってことになるからな。

 まあいつまでこうしていてもしょうがない。

 結果はもう決まっているのだからな。

 俺は水晶に触った。

 しかし、驚くほど何も起こらない。


「ああ…。残念だったな才能ないわ」


 わんちゃん自分は世界最強かもとか思ってたけど全然違かった。

 むしろ運動神経のなさとずっと家でダラダラしてたのを考えると世界最弱かもしれない。

 いやいやおかしいだろ。

 と言いたいところだが、まあ普通に考えたら当たり前だ。

 今まで15年生きてきて一回も魔法使ったことないしな。

 

「次はお嬢ちゃんの方だな」


 そういうとパルシアさんは坂内の方に水晶を回す。

 俺が手を触れた時に何も起きなかった時点でもう察したのか、何も期待していないというような顔をして手を触れていた。

 するとなんか凄い色が変わったり点滅したりしている。

 坂内は慌てて手を離した。


「お、なんだこれ!?すっげぇ」


 パルシアさんは驚きのあまり顎が外れてしまっている。

 主人公は坂内の方だったか…。

 しかし、これは酷すぎる。

 俺の需要が本当にない。

 もしこれが逆だったら守られるか弱い女子という構図が出来上がるがこれはありだ。

 しかし、美少女の主人公にずっと付きまとうクソ雑魚の男が毎回いたらどう思うだろうか。

 シンプルに邪魔だ。

 正直消えてほしい。


「たまに普通とは違う色に光ったとかいう話は聞くが、何色も反応が出るとはな。いいもん見たぜ。こりゃあ俺じゃどういう意味なのか判断できないが」


 俺に気を使ってなんも言わないが坂内は随分とうれしそうな顔をしている。

 まあ俺も正直安心している。

 それが自分ではなかったのは残念だが知り合いに才能があると分かれば心強い。


「お前らどっから来たんだ?そっちのお嬢ちゃんは誰かの子孫とかか?」


「実は私違う世界の日本というところから来たんです。それで帰りたいんですが、帰る方法ありますかね?」


 ようやく坂内の方が本題に入った。

 日本にいる時はこの世界の存在なんて当たり前だが知らなかった。

 しかし、こっちの世界はどうだろうか。

 何か伝説的なものでもいい。

 どういう扱いになっているのか知りたかった。


「なんだよそれ。まあ言いたくないっていうならいいけどな。この件については面倒事になりそうだから。秘密にしとくよ」


 やはり、ダメか。

 これは帰るまで長い道のりになりそうだ…。

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幼馴染と異世界転移 ささちゃん @sasacha4852

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