37.おまえだろ!
リシェントに構わず、アシャスが言葉を続けた。
「
「なるほど……魔界と人間界で変わらないのは、自然や構造物ばかりでは、ないようですね」
「他の連中も、当然、そこまで計算に入れててさ。
「
「いや。あいつは、いつでも裏切れると思ってるから、安心してるんだよ」
アシャスは、
視線の先で、
調子に乗った連中が、リシェント配下の魔物たちと、飲食物を交換していた。多分、双方で何人か腹を壊して、軽い
アシャス自身も、仲間や
アシャスがおっかなびっくりするわけにはいかないので、もりもり食べた。ヒカロアが
「
「アシャスさま、あなたは……」
「裏切られたって、うらまないよ。その代わり、人間だろうと魔物だろうと、敵なら敵だ。俺は……俺を信じてくれるみんなのために、全力で戦う。うらむなよ?」
アシャスの左腰で<
まだ完全な状態ではないが、それでもあらゆる魔物を、魔法を、
「もちろん、おまえが俺を信じてくれるなら、おまえのためにも全力で戦うけどな」
アシャスが
「アシャスさま……
「いや、だから救世主はやめろって」
リシェントの青白い肌が、
まっすぐに見つめられて、アシャスも照れくさくなった。
気がつけば
「なんだか、今さら
「申しわけありません。アシャスさまの
「どんどん
「まったくもって、
うやうやしく頭を下げるリシェントに、アシャスはまた苦笑しかけて、大あくびをもらした。
「本気で眠くなってきたな……悪いけど、リシェント、先に休ませてもら……」
歩き出そうとした足が、ふらついた。そのアシャスの肩を、リシェントが、意外としっかり抱き支えた。
「アシャスさま。大切なお身体に御無理をさせてしまったのは、わたくしめの
「いや、まあ……そんな、大層な話でも……」
背中から肩に手を回され、横に並ばれると、身長差もあって男女のようだ。少し腹が立つ。
それはそれとして、本格的に意識が薄くなってきた。昼食後の軍議で王さまが長々と訓示を述べているような、あの感じだ。
アシャスはかなり努力して、リシェントの歩みについて行った。肩を支えられ、手を引かれて、なにか違和感のある体勢だったが、殺気のようなものは感じない。
いざとなれば、身体に
しばらくして、魔界の入り口、世界と世界の境界線に存在する
********************
新築マンション上階の二フロアは、
よく晴れた日曜の午後、日差しに輝くバベルの塔さながらの空中庭園をながめながら、
「あっははははははは! ヘナチョコ! やっぱりヘナチョコじゃない、あんた! あっはははははははは!」
「反論の余地、ないけどさ……自分もあんな目に合っておいて、よく笑えるよな」
アシャスが内心で、ため息をつく。
自分なんだから、
「無事に片づいたんだから、笑い話よ。かっこいいシンイチローとヒカっち、ミツヒデの魔王さまモードで、全部上書き保存しちゃったわ」
「
「アシャスも見習うべきですね。まあ、罰ゲームとしては、この辺で
明るいリビングに素晴らしく調和した、ちょっと
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