34.よろしくお願いしますね。
マイク前の、新婦友人と新郎友人が祝福の言葉を述べる。会場の照明がついた時、
新婦のウェディングドレスはプリンセスラインのスカートが大きな花のようで、オフショルダーのビスチェとトレーンも
新郎のタキシード姿も、新婦のパートナーかつ引き立て役として、適切に機能した。
二人が剣のような巨大なナイフを使って、やはり巨大なウェディングケーキを、目にも止まらぬ速さで正確な人数分に切り分けた時は、意外すぎる特技に会場中が
新郎の上司と同僚は、メーカーの開発部門ということもあって、博士課程卒や修士課程卒がほとんどだった。
一目瞭然で最年少の新郎に結婚を先んじられた者も多く、祝福半分、オープンなやっかみ半分のコメントが、会場を笑わせていた。新婦と一部の新婦友人が、カップリングだのウケだのセメだの、不穏当な会話で盛り上がっていた。
他にも、新婦上司がオブラートに包まないスピーチで新婦同僚に取り押さえられたり、新婦母がちょくちょく
新郎母は、落ち着いて見えた。
常識的には、他の
まともではない新郎新婦が、じとりと目を細めていた。
まあ、そこまでは良かった。
会場前に親族だけが残った、最後の最後だった。
「本日はお疲れさまでした。
「いやあ、めでたいついでだから、言っちまうけど」
「私たちも婚約しました。よろしくお願いしますね。
その一連の動作が終わるまで、誰も、理解も反応もできなかった。
「え……ええええええっ? こ、婚約って……ちょっと、お兄ちゃんっ?」
「母さんっ? え?
「か、
「あら、まあ……
少なくとも、年齢差ほぼ二十歳には見えない。それはそれとして、
「え? 待って? それじゃ、あたしとシンイチローって、夫婦だけどお兄ちゃんの義理の子供で、親の義理の妹ってこと……?」
「
「俺たちと女神さまたち、親子と兄弟姉妹の、両方だよな……」
「ついでに
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
合計六人分の沈黙に、
「すごい展開で、俺も自分でびっくりしてるけどな! あはははは」
「人生、いろいろな驚きがありますわね! うふふふ」
********************
ホテル側の用意したスイートルームは、落ち着いていながら
静かで広くて、内装も上質、窓から見える夜景も美しかった。
「それにしても、お兄ちゃんたちには驚かされたわね。腰が抜けるかと思ったわ」
「本当にね。ぼくたちも自分のことで精一杯だったから、全然気がつかなかったよね」
「あれ、式の前か途中で言われたら、全部持ってかれていたよな。女神さまたちも、一応は気を
「私たちの
ヒカロアが
「あ。
「なんでしょう?」
「あたしとヘナチョコって、魂は一緒だけど、記憶が別人なわけよね? なんて言うか、生まれてからこの
「
「ヒカロアさんとアシャスさんって、今の記憶的に、何歳なんですか?」
「俺もヒカロアも同い年で、二十四歳だよ」
「ええっ? ぼく、二十五歳です! ヒカロアさん、年下だったんですか?」
「あはははははっ! やっぱり言われた! ヒカロア、おまえ、現世の常識的にも
アシャスが、鬼の首を取ったように笑い倒す。ヒカロアは苦笑して、肩をすくめるだけだった。
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