第五幕 男の子にさよなら?
32.正直に申します。
街を見下ろす窓辺に、
「
「相変わらず、スケールの大きな話ですな」
「まあ、いろいろ直接、見聞きしましたし。あなたが女神というのも、もうそのまま納得するしかないですよ」
「
「こうして、人の身でながめてみると……自分の及ぼした影響が、恐ろしくもなります。私の、運命への
「彼の人生をあのように
「想像できないことも、ありませんがね」
「少し気になっていたのですが……
「そんな細かい調整ができれば、苦労はしません。天変地異ならともかく、
「つまり、運命なんてその程度ってことですよ」
「人間一人一人の行動、全部に
「まあ……!」
「そりゃあ俺だって、うまくいかなかった恋愛なんて、それこそいくらでもあります。運命だったかも知れませんが、その
サークル活動に名を借りた販売ルートの構築は、不思議にも被害にあった、というか自発的意思の
学生の火遊びにしては、危ないところだった。いずれは都市伝説にでもなって、忘れ去られるだろう。
事件の主犯として逮捕された
ここ十年間の記憶をすべて失い、警察病院で目を覚ました時、高校の出席日数と大学受験の心配を口にした。事件前の、関係者の
いささか
「運命とは、いわば、無数の命を運ぶ大河の流れ……女神でさえ、自由に操ることはできません。恐ろしいとは思いませんか?」
「外から見ればそうかも知れませんが、中で泳いでいる魚の方は、これで結構のんきなものでして」
「
「……こう見えて、
「まったくもって冗談です。いつも変わらずお綺麗なので、年齢など、ついつい忘れてしまいます」
「誰だかの言葉ですが、人は自分の人生しか生きられない、その人生と、自分の外にある運命を正しく認識した時、初めて心が自由になるそうで……まあ、正確なところは、そのうちミツヒデに講釈たれてもらうとしましょうか」
「女神さまや魔王さまのやらかしが、あってもなくても、現世の人間の功罪は、現世の人間が手をつなぎ合って責任を持ちます。そういうもんでしょう」
「なんだか少し、
「それは失敬」
「許します。女神の心は
待合ロビーに、会場係員の声がかかる。スーツ、和装、フォーマルドレスに着飾った招待客が、開いた扉にそぞろ歩く。
「式が始まるようです。俺たちも行きましょう」
折り目正しいライトグレーのスーツを着た
「それはそうと、
「でしょうね」
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