31.なんだったんだよ!
滅んだ世界が戻らないように、転生した
今ここに存在する肉体も、意思も、同一の状態に存在し直すことは二度とない。進むしかなかった。その概念を時間と定義するのなら、時間は進むだけで、絶対に戻ることはない。
アシャスの
「今のあなたは、か弱い女性です。衣服を脱がされ、お尻をかじられて、笑って済ませるわけにはいかないでしょう」
「いや……それは昔だって、笑えなかったけど」
「私は笑いました」
「おい」
「ですが、今のあなたでは笑えません。先刻までの私が、どんな気持ちでいたか……おかしいですね。男性だろうと女性だろうと、あなたには変わりないはずなのに」
その言葉が、アシャスの胸に響いた。
もちろん、アシャスにもわかっていた。なにもかもが変わって、自分も変わらなければならないことは、とっくにわかっていた。
それでも、それだけ、言って欲しかったのだ。
「私は……あなたを愛しています。それが私のわがままでも、あなたを守りたい。私が守れる、手がとどく私のそばから、もう離れないで欲しいのです……アシャス……」
「うん……わかってる。ごめん、ヒカロア……」
アシャスは目を閉じた。動けない身体を、ヒカロアに
触れ合った身体が暖かかった。意識のすみっこで観葉植物っぽいなにかが
長いような、短いような呼吸が交わって、ヒカロアがアシャスの
「さて。この感触も大変に
「え……? あ、おい……」
離れるなら手か足か、どっちかほどいてくれ、と言いかけて、アシャスは息を飲み込んだ。
退勤してまっすぐ、約束していた
その
身体中から無数の翼のように、紫に輝く炎が広がった。
吹き上がる
長い黒髪と
「ええええええっ? おま、それ……ッ? どうして……っ?」
「手伝おう。配下と
黒く
「お、おお、おまえまで……なんで、それ……っ?」
「四天王は
「神器は
ヒカロアとワスティスヴェントスが、
背中側のアシャスから二人の顔は見えないが、見えないことに、やっぱりあまり意味がない。
「え、ええええ……っ? じゃあ、それ、俺にもできるってこと……? まだ俺、勇者? さっきまでの会話、なんだったんだよ!」
「マウンティングです」
「ひどいこと言い切ったよっ?」
アシャスの、ほとんど悲鳴に、二人の声は表面上は
「そうだな。この連中の
「ついでに地球もお願いします。少し手が、すべりそうですので」
「おおおおおいッ! ななななに考えてんだッ! やめろって! そんなもの、
なんと言っても、百三十八億年前に、旧世界を終わらせた<
ヒカロアが、少しだけ考えるふりをする。
「確かに、こんなゴミ掃除に使うものではありませんが……そこは、まあ、オーナー特権ということで」
「また世界が滅んだらどうする気だよっ! こいつらだって、変なクスリでおかしくなってるだけで……し、
「ぼくが? どうしてです?
「えええええっ? あ、あれ?
「おお……なんか、かっこいい。トゥンクってした」
「
「ええと、ヒカロアくん? ミツヒデ? 俺も、横にどいていた方が良いのかな……?」
「ですね」
「うむ」
「ちょっッ! 待てッ! バカぁぁぁああああああッッ!!!!」
アシャスが絶叫した。
絶叫をかき消して、世界の終末に匹敵する、かも知れない光が、週末の都内からこの
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