29.大丈夫!
身体の下敷きになった親指の皮膚が、結束バンドの締めつけで、
鋭い痛みで一瞬、呼吸が止まった。
身体が
「イイねえ! 俺もさ、
アシャスの近くに、
「中の葉っぱは見えないかな。でも、まあ、懐かしいはずだよ? これさ、さっきも言ったけど、規制されてるようなものじゃないんだよ。どこだったかなあ、どっかの外国じゃ、普通に生えてる植物なんだよ、うん、多分」
アシャスは口を開きかけて、やめた。
会話は成り立っているように思えても、意思の
「あの頃はこうやってさ、
「見てよ! ここまで綺麗に精製できたんだよ! 俺のオリジナル! 原材料の大量栽培には、そこのマヌケな連中を利用したけどね。すごいだろ、俺!」
陽気に笑う目の
アシャスは、指の痛みと怪しい煙で、にじみそうになる涙をやっとこらえて、ずり下がる。ひっくり返った
それでも、すぐに動けなくなる。
アシャスの背中に
「ち、近づくな……バカ……っ!」
「そういう反抗的なのもイイよ……! 強がって、がんばって、嫌がってさ。それでも、どうしようもなくなってポッキリ折れる時、きっと、すごく気持ちイイからさ!」
「……
「ん? なに?」
「
悔しい、と思った。
それがどうして、こんなに違ってくるのか。アシャスは悔しくて、情けなかった。
アシャスは、
「大丈夫! 人間の身体ってね、
「みんな、気持ちイイって喜んでたよ?
「な……なにを……」
「飲んだり注射して、ゆっくりおかしくなるのもイイんだけどさ。がんばって嫌がってる
冗談みたいに大きい、注射器のような形で、針の代わりにゴムの管が伸びている。
「安心して!
ほがらかな笑顔と、各種の情報が頭で結びついて、アシャスが声にならない声で叫んだ。
「ーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」
「なっ? なによ、もう! びっくりした! 頭の中で、そんな大声……」
アシャスの絶叫で、
アシャスが起きた時の行動を一通りなぞって、記憶を回収する。効率良く、ほんの少しの空白で、同じ認識に
「っぎゃーーーーーーッ!! なななな、なによ、なによこれっ! ちょっと! 考えられる限り、最悪の状況になってんじゃないの! なにしてくれてんのよーーーーーーッ!!」
「ごめんごめんごめんごめんごめんっ!!」
絶叫し直す
「あれ? なんか急に、
「あああああああッ!! ふざけんなッ! 寄るなッ! さわるなッ! なんとかしなさいよ、ヘナチョコーーーーッ!!」
「ごめん! 本気でごめん! ごめん
「そうやってさ! 強がってた女が泣いてあやまるの、ギャップがグッとくるって言うか、すっごくイイよ! 可愛いよ!」
「こんっっっっのクズ野郎ーーーーッ!! あたしが泣こうが
「ご、ごめん! ホントごめん!
「興奮するなあ! やっぱりさ、
右に左に、無駄に転がる
「ドチクショーーーッ!! どんな生き恥さらしても、そのツラ、ぜっったい地獄に落としてやるから、覚悟してろよーーーーッ!!」
「ごめん
アシャスは、混乱の
こんなハメに
「……ごめん、ヒカロア……っ!!」
小さく、かすれた声だった。
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