28.なにがなにやら。
大学生の夏休みは長い。
予定を全部キャンセルして、実家に引きこもっていれば、なおさらだ。新発売のゲームもクリアして、もう、新顔の家族になった子猫を
ゲームに登場する戦国武将モチーフの美形キャラから命名された黒猫は、小さいながら意外に
お盆に、高校の部活の友達から呼び出されて、居酒屋で大騒ぎをした。まだ未成年だったけれど、後輩の
も、というのは正確じゃない。後で白状させたが、首謀者だった。
部活では、おもしろ半分にしごいたりした。おとなしそうな顔で、その通り素直だったから、少し調子に乗ったこともあるのは、まあ、反省していた。
大学も同じで、顔見知りの後輩だし、気安く声をかけたりしていた。
生意気に気を
笑っていた。
彼氏をポイ捨てして退学にまで追い込んだ女、という評判が、学校中に広まっていた。事実だ。背中を丸めたり、うつむいたりは、絶対にしなかった。
いつの間にか、
友人らしい男女が
あった。多分。
********************
うすぼんやりとした意識で、
「変な夢、見たな……もう、なにがなにやら。まったく……」
身体を起こそうとした。動けない。なんだか
意識と同じ、うすぼんやりとした暗がりに、何百人というダークグリーンのスプリングコートを着た男女が
講堂のような空間に、ぎっしりとひしめいて、むせかえる湿気に紫色の煙が混じっている。
イケメン俳優が海賊に
「な……ななな、なんだ、これ……?」
身をよじる。
ようやく、アシャスは自分の身体を見た。
退勤した時の、ブラウスとボトムスが手首と足首までずり下げられて、インナー姿だ。両腕は後ろにまわされ、親指同士を、感触からして結束バンドのようなものでくくられている。無理に引っぱると、指がちぎれそうな痛みだった。
足の方はパンプスが脱げて、ボトムスのベルトでそのまま縛られている。うつ伏せで、
『会長さまは神』
『自然の神は、我らと共に』
『心を一つに、世界を平和に』
『春はあけぼの、九州わかたか』
アシャスは
園芸関係のサークルなのか、周りを囲むようにたくさんのプランターが置かれて、大ぶりで先端の
「なな、
「や、やっと、気がついたかニャ……ヘナチョコ勇者……」
周りを見たついでに、プランターに混ざって、四つ重なったペット用ケージが目についた。しゃべる三毛猫、サバトラ猫、ハト、ハスキー犬の取り合わせに、一所懸命、聞いた名前を思い出す。
「あっさり、カ、カイチョーに……だまされたみたいだニャ……
ぐったり横たわっても、三毛猫のブライストラは口が悪かった。
アシャスが
「いや、もう、おまえらこそなんなんだよ……? このおかしな連中に、関わってるのか? それでどうして、そのざま……?」
「も、申し開きようも、ありません……」
サバトラ猫のガロウィーナが、ぺちゃんと水たまりのように、顔を伏せた。
ハトのランスタンスが、無駄なイケボをふるわせる。
「む。勇者よ……薬物だ……。薬物に、気をつけよ……」
「遅いよ! 見りゃわかるだろ!」
アシャスも、言いたくはないが、思わず言う。前後も経緯もさっぱりわからないが、同じ穴に落ちているのは確かなようだ。
「無味無臭でござる……せ、
「じゃあ、俺が気がつかなくても仕方ないだろ! 人間さまに無茶ぶりするなよ、犬!」
不毛な会話を打ち切った。お互い、自分を
相変わらず絶妙にうるさいカオスの中で、
見たくなくても、見ないことに意味がない。アシャスは、
ブラックジーンズに、ダークグリーンのスプリングコートのフードを目深にかぶって、
「やあ、
「
声を上げた
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